研究課題
拡張型心筋症(DCM)は、難治性心筋疾患の一つである。特に、若年発症例は、予後が極めて悪く心臓移植しか根本的治療法がなく、その発症メカニズムの解明は急務である。サルコメア蛋白遺伝子異常が、家族性DCMの原因遺伝子として報告されている。しかし、孤発性DCMでのサルコメア蛋白遺伝子異常の関与は不明である。本研究では、孤発性DCMでのサルコメア蛋白遺伝子群の後天的遺伝子制御異常としてエピジェネティクス異常に着目し、1) DCMでのサルコメア蛋白遺伝子群のDNAメチル化解析を行い、DCMに特異的なDNAメチル部位を明らかにする。2) 生命予後、身体活動能および心機能に関する追跡調査を行い、これらを規定するエピジェネティクス異常を同定する。これまでに、研究への同意を得られた孤発性DCM群50例および対照群50例を対象した。経大腿あるいは頚静脈アプローチにより右心側心内膜心筋生検を施行し、右室側心室中隔から心筋生検組織を採取した。収集した検体は、液体窒素やドライアイスを用いて迅速に凍結し、検査まで冷凍保存(-80℃)している。今後は、これらのゲノムDNAの断片化処理を行う。ゲノムDNAをバイサルファイト処理後、サルコメア蛋白遺伝子群(β-ミオシン重鎖1、トロポニン T、トロポニン Iおよびα-トロポミオシン遺伝子)をコードするCpGサイトのメチル化について、PyroMarkシステムを用いて、バイサルファイト処理後のゲノムDNAを解析する。さらに、DCM群での 心機能評価 (心エコー図、症例によってはスワンガンツカテーテル検査)、心血管イベント (心不全、不整脈、脳卒中)、運動耐応能の評価とし、6ヶ月毎に評価する。これらの評価項目と上記エピジェネティクス異常との関連性を探求し、DCMの発症やその進展のメカニズムを解明する。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、目標症例数である孤発性DCM群50例および対照群50例から研究参加への同意を得られた。これらの症例より、経大腿あるいは頚静脈アプローチにより右心側心内膜心筋生検を施行し、右室側心室中隔から心筋生検組織を採取した。収集した検体は、液体窒素やドライアイスを用いて迅速に凍結し、検査まで冷凍保存(-80℃)している。さらに、DCM群および対照群の現病歴、既往歴、家族歴、現症、血液検査、生理機能検査などベースラインデータの構築、また、6か月毎の心機能評価 (心エコー図、症例によってはスワンガンツカテーテル検査)、心血管イベント (心不全、不整脈、脳卒中)および運動耐応能の評価について実施中である。上記より、本研究計画はおおむね順調に進展している。
サルコメア蛋白遺伝子群のDNAメチル化解析:心筋生検組織よりゲノムDNAを抽出し、これらのゲノムDNAの断片化処理を行う。ゲノムDNAをバイサルファイト処理後、サルコメア蛋白遺伝子群(β-ミオシン重鎖1、トロポニン T、トロポニン Iおよびα-トロポミオシン遺伝子)をコードするCpGサイトのメチル化について、PyroMarkシステム(既存PyroMark, QIAGEN)を用いて、バイサルファイト処理後のゲノムDNAを解析する。関連解析:対照群との比較検討を行いDCMに特異的なサルコメア蛋白遺伝子群のDNAメチル化サイトを同定する。これらの結果をもとに、孤発性DCMでのエピジェネティクス異常をお明らかにする。追跡調査DCM群での追跡調査の評価項目は、1) 心機能評価 (心エコー図、症例によってはスワンガンツカテーテル検査)、2) 心血管イベント (心不全、不整脈、脳卒中などによる入院あるは死亡)、3) 運動耐応能の評価とし、6ヶ月毎に評価する。さらに、これらの評価項目と上記エピジェネティクス異常との関連性を探求し、DCMの発症やその進展のメカニズムを解明する。
次年度は、これらのゲノムDNAの断片化処理を行う。ゲノムDNAをバイサルファイト処理後、サルコメア蛋白遺伝子群(β-ミオシン重鎖1、トロポニン T、トロポニン Iおよびα-トロポミオシン遺伝子)をコードするCpGサイトのメチル化について、PyroMarkシステムを用いて、バイサルファイト処理後のゲノムDNAを解析することとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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