研究課題
本研究では、まず培養血管内皮細胞に酸化ストレス、カンプトテシン、複製ストレスを用いて老化細胞を誘導し、顕微鏡撮影から「健康細胞」と「老化細胞」を正答率95%程度の高精度で判別可能なシステム構築を行いました。我々は、老化細胞の細胞画像を畳み込みニューラルネットワークに入力し、老化確率を出力することで細胞老化を定量的に評価可能であるということを発見し、老化細胞の細胞形態から定量的な老化スコアを算出なシステムの開発に成功しました( Deep-SeSMo)。本システムを用いると、老化状態を反映する分子マーカーを必要とせず、撮影した顕微鏡画像から細胞がどの程度老化しているかをわずか0.1ミリ秒で判定可能となりました。実際に細胞老化抑制作用を有する化合物(メトホルミンなど)による抗老化の効果も正しく判定できることが確認されました。 本システムを用いて実際に化合物ライブラリーを用いてスクリーニングし、テレイン酸、Rock阻害剤、大豆イソフラボンの一種であるダイゼイン、MEK阻害剤などの薬剤を新規の老化抑制の薬剤候補として抽出しました。これらの化合物は、実際に培養血管内皮細胞の細胞老化を抑制することがSA-b-GAL染色や、P21-P53、P16タンパクのウェスタンブロッティングにより確認され、さらにRNAシーケンスによる網羅的解析では、老化細胞から惹起される炎症反応が抑制されることが判明しました。本研究で同定された抗老化候補化合物について今後さらに研究を進めることにより、血管老化を抑制する新規治療薬開発につながることが期待されます。さらに、本研究は、疾患の化合物スクリーニングに対する手法としてAIによる画像解析が有用であることを実証したものであり、細胞形態の変化を特徴とする様々な疾患に対して本システムを応用した創薬スクリーニングが行われ、治療薬開発を活性化させることが期待されます。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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