研究課題/領域番号 |
19K08554
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉田 昌平 金沢大学, 附属病院, 助教 (30623657)
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研究分担者 |
野村 章洋 金沢大学, 附属病院, 特任准教授 (30707542)
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心サルコイドーシス / RNA-seq / サルコイドーシス / JAK-STAT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、心臓サルコイドーシスの心筋における転写産物(トランスクリプトーム)と、HLAタイピングに着目したゲノムシークエンスの解析を行い、心臓サルコイドーシスの病態を明らかにすることである。現在までに集積したサルコイドーシス症例を、心臓病変がある群と心臓病変がない群に群分けをしてRNA-seqを行なった。すでに確立していた心筋生検検体からのmRNA抽出、ライブラリ作成、シークエンスの流れを用いて、十分なRNAリードデータが得られた。検体の中で2検体はPCAプロットにより外れ値と判断され、396個のDEGsが同定された。さらにパスウェイ解析を行ったところ、心臓病変をもつサルコイドーシス症例において心臓発生に関するBMPシグナルとJAK-STATを介したIL-5シグナルに関する パスウェイの活性化が認められた。 難治性の皮膚サルコイドーシスに対し てJAK2阻害剤を使用して皮膚症状の改善を認めたという報告があり、本パスウェイは心臓サルコイドーシスの病態にも関与 している可能性、ひいては難治性心臓サルコイドーシスの治療に応用できる可能性があると考えた。 血液から抽出したDNAに対して次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を予定していたが、今回のRNA-seqにおいて興味深いパスウェイが同定されたため、まずパラフィン切片に包埋されている検体に対してBMP、JAK-STATの免疫染色を行う予定とした。CD68、pSTAT1、pSTAT3の心筋生検検体に対する免疫染色を行うこととしたが、リンパ球をはじめとした血球の浸潤が乏しく、免疫蛍光染色では明らかな差が認められなかった。 DNAは大阪大学との共同研究で全ゲノムシークエンスを解析中である。またHLA typingと臨床症状との比較に関しても同研究で検討を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心臓サルコイドーシスの症例を集積する過程で、心臓サルコイドーシスが疑われたが、心筋生検も含めて精査を行ったのちに心臓病変は認めないサルコイドーシ スと判断された症例を数例認めた。そこで、現在までに集積したサルコイドーシス症例を、心臓病変がある群11例と心臓病変がない群3例に群分けをしてRNA-seq を行なった。 2サンプルがPCAplotで外れ値と判断されたため、26サンプルでの解析を行い、396個のdefferential expression genesを同定した。さらにそれを元にしてパス ウェイ解析を行ったところ、心臓病変をもつサルコイドーシス症例において心臓発生に関するBMPシグナルとJAK-STATを介したIL-5シグナルに関するパスウェイ の活性化が認められた(FDR=6.1x10-3)。 コロナ禍での研究業務の遅延が主な原因である。
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学との共同研究であるDNA解析・HLA typingと表現型についての検討を継続する。 全ゲノム解析を継続して行う。免疫染色の染色法についてポジティブコントロールを置き再染色を行う。 RNA-seqの結果を再度確認し、その他のパスウェイについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における実験の遅延による。DNA解析を含めた実験の遂行に本年度の予算を充てる予定である。
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