研究課題
心房細動の危険因子として近年、高尿酸血症が関与することが報告されているが、詳細な機構は分かっていない。一方で、心臓に存在する組織常在マクロファージが心筋とギャップジャンクションを介して結合し、これらが破綻すると伝導障害が起きることが報告された。本研究では、高尿酸血症による心房細動が心臓の常在マクロファージの挙動の変化によって引き起こされている可能性を、in vivoマウスモデルおよびin vitroの解析を通じて検討することを目的として、研究を行った。マウスin vivoで高尿酸血症状態を作り出し、心臓常在マクロファージの数が変化するかを解析した。結果、心臓常在マクロファージの数に変化はなかった。そこで、in vitroでの心臓マクロファージの挙動を見るために培養系を立ち上げている期間中、3つの新しい発見と報告があった。一つは報告として、高尿酸血症患者の大動脈で、dual-energy CTにより尿酸塩結晶が検出されたとの報告があったこと、昨年の実験で、尿酸塩結晶がマウス心臓線維芽細胞に取り込まれることが示唆されるデータを得たこと、更には、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)でも、同じように尿酸塩結晶が取り込まれることを示唆するデータを得たことである。更に、予備実験のデータとして、血管内皮細胞がマクロファージ等の単球の分布を変えうるケモカインを発現し、尿酸塩結晶の取込みによってそのケモカインの遺伝子発現変化が見られた。したがって、このケモカインによって心臓内の常在マクロファージの分布が変化する可能性が示唆され、これが心房細動に関わる可能性も考慮する必要性が出てきた。
3: やや遅れている
コロナ禍における物品納入の遅れが出ている。物品によっては度重なる納品の延長で半年以上の遅れが出た。
血管内皮細胞の尿酸塩結晶の取込みによってケモカイン以外の遺伝子発現も発現変化が予想されるため、網羅的遺伝子発現解析を予定している。また、単球の遊走に関わるケモカインの発現上昇が遺伝子レベルで検出されたため、実際に単球を引き寄せるかどうかをin vitroのマイグレーションアッセイによって検討する予定である。また、心臓線維芽細胞においても尿酸塩結晶を取り込むことを示唆するデータを得ているため、特に心臓内の常在マクロファージの生存にかかわるサイトカイン、遊走にかかわるケモカインの遺伝子発現を検討し、さらにマクロファージとの共培養によって、実際に機能しているかを検討する予定である。
コロナ禍により物品の納入が大幅に遅れたのが最大の理由である。また、申請者が疾患により3ヶ月ほど業務を縮小せざるを得なかったことも理由の一つである。今年度は大幅に納品が遅れた物品が4月末日から5月上旬にかけて入荷予定である。また、新たに進展した血管内皮細胞、線維芽細胞との相互作用についての実験を、遅れを取り戻すべく、研究支援を最大限活用しながら行う予定である。
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