研究課題/領域番号 |
19K08558
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90446047)
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研究分担者 |
中村 一文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10335630)
赤木 達 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60601127)
三好 亨 岡山大学, 大学病院, 講師 (70444651)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心不全 / 尿毒素 / インドキシル硫酸濃度 / 心腎連関 |
研究実績の概要 |
高齢化に伴い心不全患者は増加の一途をたどっており、その予後は収縮障害・拡張障害ともに不良である。心不全発症において心 腎 連 関 が 近年注目されるようになり、腎機能低下が心不全に悪影響を及ぼすことが多く報告されるようになってきたが、心腎連関の病態進展の分子機構は未だ不明な点が多い。慢性腎臓病では、全身的な代謝変化および尿中への代謝産物の排泄障害にともない様々な尿毒素が体内に蓄積する。これまでに約90種類の尿毒素質が報告されているが、その一つであるインドキシル硫酸は腸内細菌によってつくられたインドールが肝臓で代謝されて合成さる。基礎研究においてインドキシル硫酸は心肥大、心筋線維化を促進すること(Eur Heart J. 2010 Jul;31(14):1771-9、PLoS One. 2012;7(7):e41281)、また、臨床研究においては少数例ではあるが非透析の拡張型心筋症患者の予後とインドキシル硫酸濃度が関連すること (Circ J. 2013;77(2):390-6)、が報告されている。また臨床面では申請者らによるパイロット研究で、血中インドキシル硫酸増加が心不全再入院の予測因子であることが示唆されている。本研究では、基礎研究として、尿毒素が心不全発症に関与する分子病態を動物実験にて明らかにし、心臓における心腎連関の新規標的分子の探索を行う。同時に、臨床研究として血中インドキシル硫酸と心不全発症の関連を前向きの多施設レジストリーにて検証する。このように、基礎と臨床の両面からインドキシル硫酸の心臓への影響を明らかにし、心不全に対する新規治療戦略の基盤を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①腎摘負荷心不全モデルラットにおけるインドキシル硫酸の増加と心機能ならびに心肥大の分子動態の解明 実験モデルとして、雄のSprague-Dawley(220-250g)に5/6腎摘を行い、12週間経過をみるモデルを用いた。負荷後12週間までに左室肥大が認められるため、負荷前、6週目、12週目に採血(インドキシル硫酸)、心エコー検査、インドキシル硫酸と心機能の解析を経時的に行った。インドキシル硫酸は、酵素法を原理とする試薬が市販されており(ニプロ)、岡山大学実験室で測定した。また、同時期の心筋組織での心肥大・線維化とともに、受容体型転写因子aryl hydrocarbon receptor (AHR)、organic anion transporter (OAT)の発現変化を検討した。 ②心不全既往患者におけるインドキシル硫酸と心不全再入院との関連 前向きのコホート研究を開始した。デザインは前向き多施設レジストリーとし、対象は岡山大学およびその関連病院に3か月以内に心不全入院既往のある安定した外来患者(目標症例200例)とする。透析患者、二次性心筋症、心筋炎の症例は除外する。インドキシル硫酸測定は、岡山大学循環器内科の実験室にて行う(酵素法、ニプロ)。エントリー時に心エコーによる心機能検査と血液検査を行う。心臓超音波検査では、左房容量、左室重量、Ejection fraction(EF)、組織ドップラー指標(e’、 E/e’、s’)を計測。プライマリーエンドポインドは、エントリー後1年間の心不全再入院として予後を追跡する。現在、5施設が参加して登録が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
①腎摘負荷心不全モデルラットにおけるインドキシル硫酸の増加と心機能ならびに心肥大の分子動態の解明 今後、探索的検討として、腎摘をしないコントロールラットの心臓との遺伝子発現の変化をmRNAアレイにて検討する。インドキシル硫酸の影響としては、これまで酸化ストレスを介したものが多いため、心筋でも酸化ストレス関連遺伝子を中心にスクリーニングをかける。アレイにて候補にあがった遺伝子については、細胞培養の実験においてさらに検討を進める。 ②心不全既往患者におけるインドキシル硫酸と心不全再入院との関連 さらに、参加施設を増やして登録症例を増やす予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎研究に関する試薬、実験動物等において計上額よりも実際にかかった費用が少なく次年度繰り越しとなったが、次年度、実施する実験・症例登録に係る消耗品等に充当する予定である。
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