研究課題
高齢化に伴い心不全患者は増加の一途をたどっており、その予後は収縮障害・拡張障害ともに不良である。心不全発症において心 腎 連 関 が 近年注目されるようになり、腎機能低下が心不全に悪影響を及ぼすことが多く報告されるようになってきたが、心腎連関の病態進展の分子機構は未だ不明な点が多い。慢性腎臓病では、全身的な代謝変化および尿中への代謝産物の排泄障害にともない様々な尿毒素が体内に蓄積する。これまでに約90種類の尿毒素質が報告されているが、その一つであるインドキシル硫酸は腸内細菌によってつくられたインドールが肝臓で代謝されて合成さる。基礎研究においてインドキシル硫酸は心肥大、心筋線維化を促進すること(Eur Heart J. 2010 Jul;31(14):1771-9、PLoS One. 2012;7(7):e41281)、また、臨床研究においては少数例ではあるが非透析の拡張型心筋症患者の予後とインドキシル硫酸濃度が関連すること (Circ J. 2013;77(2):390-6)、が報告されている。また臨床面では申請者らによるパイロット研究で、血中インドキシル硫酸増加が心不全再入院の予測因子であることが示唆されている。本研究では、基礎研究として、尿毒素が心不全発症に関与する分子病態を動物実験にて明らかにし、心臓における心腎連関の新規標的分子の探索を行う。同時に、臨床研究として血中インドキシル硫酸と心不全発症の関連を前向きの多施設レジストリーにて検証する。このように、基礎と臨床の両面からインドキシル硫酸の心臓への影響を明らかにし、心不全に対する新規治療戦略の基盤を構築する。本年度は、多施設レジストリーが終了し、解析を行った。慢性腎臓病を合併した心不全患者におけるインドキシル硫酸濃度は、その後の全死亡や心血管イベントと関連することが明らかとなった。基礎実験は、継続中である。
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