研究課題/領域番号 |
19K08565
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
網野 真理 東海大学, 医学部, 准教授 (10407976)
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研究分担者 |
吉岡 公一郎 東海大学, 医学部, 教授 (30246087)
山崎 正俊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30627328)
佐久間 一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50178597)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心房細動モデル / 交感神経増生 / コネキシン発現 / 炭素線 / 放射線体外照射 |
研究実績の概要 |
背景:心室頻拍に対する非侵襲的な体外照射アブレーション療法の最近の開発は、新しい抗不整脈戦略として大きな注目を集めている(Robinson CGら、Circulation 2019)。しかしその基礎となるメカニズムに関しては、まだ多くのことが解明されていない。以前我々は、ウサギの心臓への単回重粒子線照射(THIR 15Gy)が心筋ギャップ結合蛋白であるconnexin43(Cx43)の発現を増加させ、心筋梗塞後の心室性不整脈に対する脆弱性を低下させることを報告した。 目的:高コレステロール血症の高齢ウサギを対象に、THIR の生体心電図および心房・心室頻脈性不整脈に対する脆弱性への影響を検討した。 方法:3 歳のウサギ 16 匹に高脂肪/コレステロール食(0.5%コレステロール、10%ココナッツオイル)を 14 週間与えた。8匹のウサギ(HC+THIR)に重粒子線医療加速器(HIMAC、千葉県、日本)を用いてTHIR 15Gyを単回投与した。THIRを施行しない8匹のウサギをコントロール(HC)として使用した。 結果:HCおよびHC+THIRの血清コレステロール値は、1545+386および1569+328 mg/dl(n=8、NS)であった。HC+THIRの加算平均心電図における心房遅延電位は、RMS20においてHCよりも有意に大きかった(12+0.5 vs. 2+0.5μV、n=4、p<0.01)。HC+THIRの心室遅延電位はHCよりも有意にfQRS-Dが狭く(81+5 vs. 89+7 ms);LAS40が小さく(21+7 vs. 30+4 ms);RMSが大きかった(99+27 vs. 44+13μV)(n=4、p<0.04)。心房頻拍または心房細動(AT/AF)は、HCの4例中全てで自発的または左心房(LA)のプログラム/バーストペーシングにより誘発されたが、HC+THIRでは誘発されなかった。心室頻拍または心室細動(VT/VF)は、HC ウサギの 4 例中 全てで自然またはプログラムされたペーシングまたは左星状神経節刺激によって誘発されたが、HC+THIR の 4 例中 1 例でしか誘発されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病態モデル作成過程における均一性と易不整脈性が担保されている。 実験開始前の準備段階から、実験終了までの過程で、突然死や病死などによる個体欠損が無い。 当初予定していた生体位心を用いて行うべき電気生理学検査は全て実施できた。 研究結果の解析も順調にすすみ、現時点で追加実験の必要性は乏しく、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
生体実験に用いた心筋の組織染色実験を推進中である。現在までに得られた予備データでは、HC+THIRウサギのLAおよびRA組織における免疫標識されたCx40密度は、HCウサギのそれよりも高かった。HC+THIRウサギのLVおよびRV組織では、免疫反応性Cx43の同等のアップレギュレーションが観察された。抗神経成長関連タンパク質43(GAP43)抗体およびチロシン水酸化酵素(TH)抗体で標識したLA、RA、LVおよびRV組織の交感神経密度は、いずれもHC+THIRではHCのそれよりも有意に低かった。 今後の検討では、これらの結果の再現性を再確認し、THIRは心房および心室頻拍/細動に対する脆弱性の低下に有利に働くか否かを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品経費が見積もりよりも安価で購入可能であったため、僅かな差異が生じた。11,675円の残金に対しては、抗体試薬の充当に充てる。
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