研究課題/領域番号 |
19K08568
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
大倉 華雪 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター(臨床研究センター), 次世代創薬創生センター, 研究員(移行) (20589684)
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研究分担者 |
松山 晃文 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター(臨床研究センター), 次世代創薬創生センター, センター長 (10423170)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己免疫性心筋炎 / 抗炎症 / 毛細血管再構築 / 末梢神経再生 |
研究実績の概要 |
本研究では自己免疫性心筋炎の治療targetを、炎症を制御して細胞死を抑制、血流確保のための毛細血管網の構築、末梢神経支配の再構築と想定し、IL-β活性化脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)を用いている。 令和2年度ではその作用機序(Mode-of-Action)を in vivo試験により確認した。動物モデルにIL-1βで処理したADMPCを投与した場合、IL-1βで処理しなかったADMPCと比較して左室駆出率が著しく改善した。また、これら細胞を投与した各個体の心臓組織を採取し、動脈系血管のマーカであるEphrinB2、静脈系血管のマーカであるAPLNR、ならびに末梢神経のマーカであるNFに関し、免疫組織化学的検討を行った。EphrinB2(動脈系マーカー)、ならびにApelin Receptor(静脈系マーカー)の陽性数は、すべてIL-1βで処理したADMPCでは処理していないそれよりも有意に高い事が示された。このデータはIL-1βで処理したADMPCが、処理していないそれと比較して慢性傷害組織の修復に不可欠な動脈(血液の流入)、静脈(血液の流出)を修復・再生する能力が高い事を示唆する。
組織修復により多くの血流が不可欠であり、IL-1βで処理したADMPCによる動脈・静脈系血管の修復・再生作用が心筋組織の治癒に著しく寄与し、これがコントロールおよびIL-1βで処理していないADMPCの左室駆出率の改善を凌駕した理由であると推定された。加えて、細胞が投与された領域でのNeurofilament 68(末梢神経マーカー)の陽性数も、IL-1βで処理したADMPCでは処理していないそれよりも有意に高いことが示された。これは、IL-1βで処理したADMPC投与は末梢神経をも修復・再生することを示しており、心筋組織における末梢神経の再生は予後の改善にも寄与すると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivo試験で、自己免疫性心筋炎の病態生理から治療targetと想定した作用点を検証し、IL-1β活性化ADMPCが細胞死の抑制、毛細血管網再構築、末梢神経再生に寄与しうることを確認した。これら成果より、予定通りの進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性心筋炎の炎症の主座は心筋細胞であり、心筋細胞数の増加についても検証を進める。コロナ禍にあって、SARS-CoV-2が心筋細胞や心筋組織血管内皮細胞のACE2受容体を介して感染、慢性傷害につながり、Covid-19入院の中等症以上の患者では30%を超える症例でトロポニンT高値など心筋に傷害が生じているとされる。本研究成果は、Covid-19における心臓後遺障害への治療法にもつながる可能性があり、鋭意研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの世界的な感染拡大により、必要な資材が入手できない状況が継続、次年度使用額が生じた。次年度においては、in vivo試験の既存組織を用いた検証継続を予定しており、サンプルを多く用いることで検証結果の精度を上げたい。
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