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2020 年度 実施状況報告書

バイオインフォマティクスによるウイルス性心筋炎予後判定・治療に寄与する分子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 19K08569
研究機関近畿大学

研究代表者

尾村 誠一  近畿大学, 医学部, 助教 (80462480)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードウイルス性心筋炎 / トランスクリプトーム / マイクロバイオーム / バイオインフォマティクス / マウスモデル
研究実績の概要

2020年度はタイラーウイルス感染マウスの血小板中遺伝子のRNAシーケンシング解析を行った。DAVID(Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery)を用いてfunctional clusteringを行った結果、タイラーウイルス感染4日目には自然免疫関連遺伝子の発現量変化が見られた。7日目にはゴルジ体関連遺伝子や細胞接着関連遺伝子など血小板を構成する因子の変化が見られ、35日目には細胞内情報伝達や細胞骨格に関連するプレクストリン相同体や微小管に関連する遺伝子の発現に変化が見られた。発現量が変化した遺伝子のデータを用いた主成分分析(PCA)では4日目ではNADH:ubiquinone oxidoreductase subunit A1およびH2B clustered histone 1が対照群とタイラーウイルス感染群との違いに強く寄与していた。また、7日目ではWD repeat domain 89、35日目ではbystin-likeなどが寄与していた。これらの結果から、血小板中の遺伝子においても変化が見られることが分かった。また、血小板中のウイルスゲノム検出を試みたが、本サンプルからは検出できなかった。
さらに、糞便を用いてタイラーウイルス感染による腸内細菌叢変化について、16S rRNAシーケンシング解析を行った。タイムポイント毎に有意に変化した菌について解析すると、35日目ではMarvinbryantia属菌とCoprococcus属菌が有意に増加していた。これらの細菌と中枢神経トランスクリプトームデータとのパターンマッチングを行うと、Coprococcus属菌の菌量はIgAを含む多くの免疫関連遺伝子との相関が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの研究において、計画通りに急性期、亜急性期、慢性期におけるタイラーウイルス感染C3Hマウスの血液のトランスクリプトーム解析を行い、各病期における遺伝子発現パターンの違いを見出した。その中で血小板関連遺伝子の発現変化を見出した。血小板の役割から、タイラーウイルス感染により血小板中に含まれるRNAに違いがでるのではないかと考え、タイラーウイルス感染マウスから血小板を単離し解析を行った結果、血小板においてもトランスクリプトームに違いがあることが分かった。
さらに腸内細菌叢においても違いが見られるのではないかと考え解析を行った結果、主成分分析により全体的な細菌叢の構成に違いが見られたほか、個々の細菌においても対照群と感染群とで違いが見られ、細菌の量と中枢神経系の免疫関連遺伝子との相関が見られた。以上の研究で得られたデータからのバイオマーカーの候補を見出した。このことから、本研究は概ね計画通りに順調に推移していると考える。

今後の研究の推進方策

他の系統マウスの心筋炎モデルを用いてC3Hマウスと同様の研究を行い、違いが見られるかを検討する。さらに多発性硬化症マウスモデルののRNAシーケンシングデータ、マイクロバイオームデータなどのビッグデータを用いたバイオインフォマティクス解析により、疾患診断に寄与するバイオマーカーを同定する手法を確立し、心筋炎バイオマーカーの同定に応用する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じたのは、トランスクリプトーム解析およびマイクロバイオーム解析を行うために当初解析に必要な試薬の新規購入を計画していたが、別予算で購入した試薬で解析を行うのに十分であったため。
次年度繰越金と2021年度助成金とを合わせて、より多くのサンプルを作製しトランスクリプトーム解析、マイクロバイオーム解析を行う。それによりより有意なデータが得られ、バイオマーカー同定につながると考える。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Brunel University London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Brunel University London
  • [国際共同研究] Louisiana State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Louisiana State University
  • [雑誌論文] Bioinformatics Analysis of Gut Microbiota and CNS Transcriptome in Virus-Induced Acute Myelitis and Chronic Inflammatory Demyelination; Potential Association of Distinct Bacteria With CNS IgA Upregulation2020

    • 著者名/発表者名
      Omura Seiichi、Sato Fumitaka、Park Ah-Mee、Fujita Mitsugu、Khadka Sundar、Nakamura Yumina、Katsuki Aoshi、Nishio Kazuto、Gavins Felicity N. E.、Tsunoda Ikuo
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 11 ページ: 1138

    • DOI

      10.3389/fimmu.2020.01138

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Galectin-3 as a Therapeutic Target for NSAID-Induced Intestinal Ulcers2020

    • 著者名/発表者名
      Park Ah-Mee、Khadka Sundar、Sato Fumitaka、Omura Seiichi、Fujita Mitsugu、Hsu Daniel K.、Liu Fu-Tong、Tsunoda Ikuo
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 11 ページ: 550366

    • DOI

      10.3389/fimmu.2020.550366

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ガレクチン-3は腸内細菌叢に影響し,NSAIDsによる小腸潰瘍の増悪因子として働く2020

    • 著者名/発表者名
      朴雅美、尾村誠一、佐藤文孝、藤田貢、角田郁生
    • 学会等名
      第24回腸内細菌学会学術集会
  • [学会発表] タイラーウイルスによる急性灰白脳脊髄炎・多発性硬化症動物モデル:分子相同性から腸内細菌叢まで2020

    • 著者名/発表者名
      角田郁生、尾村誠一、佐藤文孝、崎山奈美江、Sundar Khadka、中村優美和、朴雅美、藤田貢
    • 学会等名
      第32回日本神経免疫学会学術集会
  • [学会発表] プロドラッグ型クルクミンCMGによる実験的自己免疫性脳脊髄炎の抑制と小腸細菌叢変化2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤文孝、カドカ・スンダル、尾村誠一、朴雅美、藤田貢、中村優美和、西尾和人、掛谷秀昭、角田郁生
    • 学会等名
      第32回日本神経免疫学会学術集会

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公開日: 2021-12-27  

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