研究課題
当院における114人の不整脈源性右室心筋症(ARVC)患者において、計1141の心電図の解析を行った。この結果、5人(4%)でブルガダ型心電図を認めた。以後2年以上心電図が記録できた4人中、2人ではブルガダ型心電図の消失を認めた。ブルガダ型心電図を認める群では、PQ間隔の延長、QRS間隔の延長をブルガダ型心電図を認めない群と比べて認めた。フォロー期間中(中央値11.4年)、19人において心臓死を、29人が心不全入院を認めた。ブルガダ型心電図の出現は心臓死および心不全入院と関連することが示された。ただし死亡例、かなり以前の入院例が多く、遺伝子検索はブルガダ型心電図を認める群では1例も行えなかった。26人の年齢をマッチさせた心室細動既往を持つブルガダ症候群患者26人と比較すると、ARVC患者で認めるブルガダ型心電図は、J波高およびS波高が有意に低値であった。心筋の広範な傷害、形態変化、それらに伴う伝導遅延、電位波高の減少、これらの要素が強いARVC症例ではブルガダ型心電図が出現する可能性が高いことが予想された。ARVCにおけるブルガダ型心電図とブルガダ症候群におけるブルガダ型心電図は、異なる様相を示すことが示唆され、その特徴的な波形を形成する機序が同一ではない可能性が予想された(J Arrhythm. 2021 Aug 30;37(5):1173-1183. doi: 10.1002/joa3.12628.)。強い脱分極異常とARVCにおけるブルガダ型心電図形成との関連性が示唆されたが、ペーシングや薬物の反応性などは検討できず、今後の課題である。ARVCとブルガダ症候群とで有効な薬剤の評価を行うことも今後検討する予定である。また今回の検討では残念ながら遺伝子変異との関連性が検討できなかったが、現在は遺伝子検索を積極的に当院初回受診時/入院時には行っており、今後の長期フォロー継続に伴ってより精密な検討が行えることが期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Arrhythmia
巻: 37 ページ: 1173~1183
10.1002/joa3.12628
Journal of Cardiology Cases
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jccase.2021.12.002