研究課題/領域番号 |
19K08574
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 修 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40752457)
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研究分担者 |
池主 雅臣 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40303151)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低体温 / 不整脈 / Wavelet |
研究実績の概要 |
低体温療法は血行動態を不安定にすることなく良好な神経学的転帰に寄与する。一方で、雪山遭難などの事故に伴う偶発的低体温症では治療抵抗性である致死的不整脈(低体温不整脈)が生じる危険がある。急速な体温上昇は弊害があり、低体温不整脈発症の予防法と緊急治療法の樹立が望まれる。 本研究は、冠動脈灌流型拍動心筋モデルを用いて、心筋温度低下の過程で形成される不整脈基盤の電気生理学的特徴および低体温不整が治療抵抗性となる機序を解明し、緊急時の治療介入法の構築を目指すものである。 本年度は実験モデルを用いて段階的低体温症を再現し、心室不整脈と不整脈基盤の電気生理学的特徴との関連に関する検証を行った。 灌流液温度を37℃(正常体温)、32℃(軽度低体温)、28℃(重度低体温)に調整して低体温状態を再現した。心筋温度低下に伴って興奮自動能は抑制され、心電図からみた脱分極指標(刺激-QRS時間、QRS幅)および再分極指標(QT時間、有効不応期、Activation Recovery Interval (ARI))はいずれも延長した。貫壁性再分極指標のバラツキは温度低下に伴い増大した。またペーシング刺激閾値は上昇し、心収縮力の低下がみられた。プログラム刺激で誘発された心室不整脈(心室頻拍、心室細動)は37℃の約50%、32℃で約30%、28℃では約65%に観察され、32℃での心室不整脈出現頻度が最も低かった。28℃では心室細動が頻回にみられ、他の温度に比べて不整脈の停止(除細動)に高エネルギーを要した。低体温時の心室不整脈発症および治療抵抗性には心筋内の伝導遅延および再分極の不均一性の関与が示唆された。 これらの研究成果は学術雑誌にて公表し、関連学会・研究会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冠動脈灌流実験モデルを用いて段階的な低体温状態を再現し、不整脈基盤の電気生理学的特徴および低体温不整脈の発症機序と治療介入法に関する知見を集積している。これまでに得られた知見は学術雑誌にて公表し、内外の関連学会にて報告している。
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今後の研究の推進方策 |
低体温を再現した実験モデルを用いて引き続き知見を集積する。 高サンプリング周波数で収集された低体温不整脈の心電図波形を連続Wavelet変換法を用いて周波数特性を解析し、除細動の有効性との関連を検証する。また、不整脈薬(I群薬など)を灌流実験系に組み込み、薬剤効果を合わせて検証する。得られた成果は学術雑誌、関連学会を通して公表する。
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