研究課題/領域番号 |
19K08581
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木岡 秀隆 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70642099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体イメージング / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では①新規生体内代謝イメージングの確立、②ATP産生増強により心不全を改善させる治療戦略の概念実証、③エネルギー代謝に基づく心不全層別化を目的としている。まず①に関してはCEST-MRIという手法を用いた代謝分子クレアチン(Cr)の分子イメージング系(Cr-CEST-MRI)確立を目標とした。静止させることが可能であり、かつ、一過性虚血モデルが容易に作成できるため、Validationが行いやすいマウス下肢虚血モデルを対象にまずは行うこととし、論文報告した(Takahashi Y, Saito S, Kioka H et.al. J Magn Reson Imaging. 2019)。今後最終的に心臓などエネルギー代謝が病態に深くかかわる骨格筋以外の他臓器を対象としたCr-CEST-MRIを目指している。②については、以前に我々がミトコンドリアATP産生能を増強させる因子として同定したG0s2に着目し研究を進めている。G0s2タンパク発現がタンパク質分解系により制御されていることを明らかとした(Kamikubo K, Kato H, Kioka H et.al. J Biol Chem. 2019)。更にG0s2分解抑制によるATP産生増強を示すことに成功している。更にゼブラフィッシュ心臓でのATP imaging系を用いてG0s2が生体においてもATP産生能を増強させることを報告した(Kioka H et.al. FASEB J 2020)。③に関しては臨床例において、ミトコンドリア機能を表す安静再分布Tc-MIBI心筋シンチを心筋症患者を対象に行っている。今後治療開始後の左室機能の改善などの予後解析を行っていく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規生体内代謝イメージングの確立に関してはマウス下肢虚血モデルを用いたCr-CEST-MRIについて論文報告を行った(Takahashi Y, Saito S, Kioka H et.al. J Magn Reson Imaging. 2019)。ATP産生増強により心不全を改善させる治療戦略の概念実証に関しては、基礎的検討として、G0s2分解機構について生化学的検討を行った。G0s2分解はRFP126/BAG6により制御されていることを解明し報告した(Kamikubo K, Kato H, Kioka H et.al. J Biol Chem. 2019)。更にゼブラフィッシュ心臓でのATP imaging系を用いてG0s2が生体においてもATP産生能を増強させることを報告した(Kioka H et.al. FASEB J 2020)。エネルギー代謝に基づく心不全層別化については現在症例を登録中であるが、Tc-MIBI心筋シンチ洗い出し率が心不全治療開始後の治療効果予測に有用である可能性が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
新規生体内代謝イメージングに関して、骨格筋で確立したCr-CEST-MRIをCr代謝が重要とされている心筋等の他臓器にまで対象を拡げていく。ATP産生増強により心不全を改善させる治療戦略の概念実証については、引き続いてG0s2に着目したうえで、分解抑制作用のある低分子化合物のスクリーニングを行う。エネルギー代謝に基づく心不全層別化に関しては、症例数を増やし予後調査を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度のテーマとしたマウス下肢骨格筋虚血モデルでの検討が順調に進み、消耗品、外注費等が想定していたよりも少なくなった。次年度は、別の動物モデルを対象として更に検討する必要があるため、繰り越した。
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