研究課題
我々はこれまでに血管内皮細胞の硬さに着目して、炎症時に血管内皮細胞自身が硬化し、この細胞硬化を基盤として血管炎症が亢進する可能性を見出してきた。本研究課題では血管内皮細胞の硬化に伴い血管内皮細胞機能がどのように変化するかを明らかにし、細胞硬化と機能変化を結びつける分子機構を明らかにすることを目的とする。炎症刺激を血管内皮細胞に加えると細胞骨格の編成が生じて細胞が硬化する。昨年度までに本研究課題において、炎症刺激時に転写共役因子であるYes-associated protein (YAP)が活性化し、細胞の硬化を誘導することを明らかにした。次いでYAPの活性化に応じてDLL4(Delta-Like Protein 4)の発現量が減少し、DLL4はNotch1を介して血管新生、炎症、血液凝固関連因子の発現を制御することを見出した。最終年度では血管内皮細胞に抗炎症作用を誘導するトロンボモジュリン(TM)が血管内皮細胞の硬さに及ぼす影響を解析した。まず、リコンビナントTMは炎症時に硬化した血管内皮細胞を柔らかくすることを見出した。さらに、リコンビナントTMは細胞接着斑や細胞骨格の形成を抑制することを明らかにした。また、リコンビナントTMによって軟化した血管内皮細胞上には白血球の接着が減弱することを明らかにした。以上の結果から、炎症時の血管内皮細胞の硬化はYAP-DLL4-Notch1シグナル系を介して血管新生、炎症、血液凝固関連因子の発現を調節し、他方、細胞の硬さ変化が白血球の接着などを介して炎症を調節している可能性が示された。細胞の硬さに依存して血管の炎症が制御されることを示す重要な知見を得ることができたと考える。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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