研究課題/領域番号 |
19K08584
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福田 大受 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (40637568)
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研究分担者 |
佐田 政隆 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (80345214)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性炎症 / 血管内皮機能 / 核酸受容体 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖尿病の最大の合併症は血管病であり、その予防が糖尿病患者の予後改善に不可欠である。血管内皮機能障害は血管合併症の初期段階であり、可逆的であるために治療標的とされているが、現在の血糖降下を目的とする糖尿病治療では、その予防・治療効果は不十分である。 我々は、高血糖が引き起こす慢性炎症が血管内皮機能障害を発症させるメカニズムとして、自然免疫機構である核酸受容体を介した炎症に注目し研究を行っている。初年度は、主な核酸受容体であるToll 様受容体9(TLR9) やstimulator of IFN gene(STING)の欠損マウスにおいて、ストレプトゾトシン(STZ)によって糖尿病を誘導すると、アセチルコリンによって誘導される血管弛緩反応は、野生型マウスに比べて悪化しないことが分かった。この結果は、糖尿病で引き起こされる血管障害によって、遊離する核酸断片が、血管内皮細胞における核酸受容体を活性化して、炎症を惹起し、血管内皮機能障害を引き起こすことを示唆している。 第2年度は、高血糖で核酸受容体が活性化されるメカニズムを、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)やマウス大動脈リング標本を用いて、TLR9やSTINGのアゴニストや核酸断片によって炎症性物質等の発現が変化するかどうかを検討し、核酸受容体が、血管内皮細胞における炎症性物質の発現に関与することや、さらにその詳細なシグナル伝達系について検討を行い、糖尿病性血管内皮機能障害の発症を抑制するための標的になりうる因子を明らかにした。これまで、糖尿病性血管機能障害における核酸受容体の役割については報告されておらず、今回得られた結果は、糖尿病性血管機能障害の新規治療標的を示唆するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLR9欠損マウスとSTING欠損マウスを用いた検討は、ほぼ終了した。細胞内での核酸断片処理に関するDNaseIIの役割についても、遺伝子改変マウスの作製を完了し、現在、解析を行っている。また、糖尿病性血管内皮機能障害の発症を抑制するための標的になりうる因子を明らかにしており、最終年度に、さらに深く検討する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
DNaseII欠損マウスを用いて、さらに詳細に細胞内での核酸断片処理機構について検証し、血管の炎症と糖尿病性血管内皮機能障害の新たな治療標的の探索を行う。また、これまでの検討で得られた糖尿病性血管内皮機能障害の発症を抑制するための標的になりうる因子の可能性について、臨床応用できるような形で、新たな動物モデルを導入し、検証していく予定であり、最終的に糖尿病性血管機能障害の新規治療方法の開発を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19感染症の影響で、海外学会に参加できず、国内学会もすべてオンライン開催となり、出張・旅費の執行ができませんでした。来年度は、結果発表のため、オンラインでも学会に参加するとともに、研究の発展のための試薬購入に使用することを計画しています。
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