研究実績の概要 |
当科で施行された開心術のうち、虚血性心疾患において単独冠動脈バイパス術の症例を対象とした。人工心肺の影響を除くため心拍動下手術のみで解析を行った。対象症例において組織使用の同意書が得られたものに対して、左心耳組織をPCRにて解析した。 これまで109例において解析を行った。平均年齢は69.5歳、女性は18例(16.5%)であった。平均BMI=23.8であった。平均NYHAは1.6であった。術前心エコーにおいて左房径は37.3 mm、左室拡張/収縮末期径はそれぞれ48.9/33.7、左室中隔厚/後壁厚は9.9/9.8 mm、左室駆出率は57.8%で、平均右室圧は22.7 mmHgであった。平均手術時間は153.3分、平均ICU滞在日数は1.5日であった。 左心耳の遺伝子発現において炎症性サイトカインのうちTNF-α (p <0.05), IL-1β (p <0.01), IL-2 (p <0.001), IL-6 (p <0.01), IL-10 (p <0.001), IL-17 (p <0.001), IL-33 (p <0.001)はc-Kitと正に相関していた。またマクロファージのマーカーであるCD11c (p <0.001), CD68 (p <0.001), CD206 (p <0.001)も正の相関を見せた。成長因子のうちIGF-1 (p <0.05), bFGF (p <0.001), VEGF (p <0.001), VEGF-R2 (p <0.001), TGF β1 (p <0.001), TGF β2 (p <0.001), TGF β3 (p <0.001)とも有意な正の相関を見せた一方でHGFの発現とは有意差はなかった(p=0.102)。その他の遺伝子としてGATA-4 (p <0.001), MEF2c (p <0.001), NKx-2.5 (p <0.01), ISL-1 (p <0.001), HAND-2 (p <0.001), およびTBX-18 (p <0.001)と正の相関を見せたが、HAND1 (p=0.196), TBX-5 (p=0.315) , TBX-20 (p=0.155), IRX-4 (p=0.122) との相関はなかった。また心臓由来ホルモンであるANPとは有意に正の相関をしたが(p <0.01)、BNPとの相関は見られなかった(p=0.161)。今後はこれらのうち、標的遺伝子を心臓由来細胞に導入、どのように細胞の分化や増殖能に差がみられるかを検討する予定である。
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