研究実績の概要 |
本年度は昨年度の虚血性心疾患(IHD)に加えて単独手術を含む弁膜症症例(VD)においても解析を行った。術前に心房細動が指摘されていない症例を対象に、手術検体を使用の同意書が得られた患者さんにおいて手術中に得られた左心耳組織を解析、虚血の有無で遺伝子発現を比較検討した。解析を行った504例のうち124例が心房細動で除外された。IHD155例、VD224例でありIHDの30%が弁膜症の手術を同時に行っていた。VDの48%が大動脈弁、43%は僧帽弁への介入であった。平均年齢はIHD vs VD =70 vs 61[歳](p <0.01)IHDで糖尿病、脂質異常症の合併が有意に多かった。助成の割合はIHD 24%, VD38%であり、BMIは23.7 vs 22.9とIHDが高かった。術前心エコーの左房径はIHD vs VD = 38.7 vs 40.3 [mm](p = 0.049)とわずかにIHDで拡大していた。 左心耳の遺伝子発現にではTNF-α, IL-1β, IL-2の発現に差はなく, IL-6, CD11c がIHDで有意に多く発現していた。次に虚血以外の因子においても心臓の転写因子の発現に影響する因子がないかを検証した。全379例について術前の背景因子や炎症性サイトカイン、成長因子、ミトコンドリア、転写因子同士の発現について網羅的に検討したところ、左房の拡大およびストレスホルモンであるBNP、ANPの発現と関連する共通の因子が認められ、これらは障害に反応して発現が増加すると考えられた。
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