研究課題/領域番号 |
19K08595
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
神崎 秀明 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60393229)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 左室拡張能障害 / 大動脈弁狭窄症 / 心エコー検査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、左室拡張機能障害が進行した高度ASにおける経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の有効性に関して調査することである。本研究では、2019年度から2020年度は、症例の選択とデータ収集を実施する予定であり、院内倫理委員会において本研究が承認後、患者情報の収集を開始している。 2019年12月まで、当センターでは約400例のTAVIが実施されており、患者背景、心エコー検査、手技中のカテーテル検査所見について、データ登録が進行中である。本研究では、TAVRが成功しても心不全を発症するリスクの高い症例について、左室拡張機能の観点からその病態を明らかにし、TAVRの患者選択基準や治療介入のプランニングについて再検討していく予定である。ただし、高額な高精度センサーカテーテルを用いる症例は、今後選択予定であるが、最終的には本研究の成果に基づき、心エコー法の指標を用いた患者選択基準の策定を考えている。今後データを固定し解析予定であるが、我々のたてた仮設が証明できる症例数は確保できる見通しである。 本研究に関連して、すでに先行して行われていたAR indexに関する研究は、"TAVR術後に残存ARを評価するために提唱された指標、AR indexに関する潜在的ピットフォール"という論文にまとめられ、すでに投稿を開始している。また、TAVRに関連する症例報告を行い、現在、査読者コメントに沿って、原稿の改訂を行っている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年7月に当センターが移転し、カテーテル検査室およびその付属設備がすべて一新された。旧センターでは利用可能であった、高精度カテーテルを用いた心機能評価に必要な部品が、移転の際に、陳旧化を理由に破棄されていたことが判明し、新規に購入し直す必要が生じた。この部品調達が本研究の障害となっており、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高精度カテーテルを用いた心機能評価は、実施予定ではあるが、心エコー指標を用いた解析は、現在のところ計画書通りに実施可能であり、こちらを先行して研究を推進していく方策である。 データが利用可能なTAVR症例数は、これまでの調査により、400件以上あることが判明しており、その大部分においてTAVR前後で心エコーが実施されており、どのパラメーターがTAVR成功後の死亡や心不全発症と関連しているのか、まずは検討していく方針としている。当初の計画では、まずは高感度カテーテルを用いた正確な心機能評価と予後推定の方法を確立し、その後、心エコーにおける代替指標でそれを非侵襲的に多数の症例で検討するという予定であったが、上記の理由から、実施可能な研究を推進している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は高感度カテーテルを購入予定であったが、前述のごとく、2019年度は病院の移転があり、カテーテルのセンサーから得た信号を波形に変換する部品を新規に購入する必要が生じたが、それが利用可能となる見通しがたっていなかったことから、高額で使用期限のある高感度カテーテルの購入を控えた結果、残高持ち越しとなった。 TAVRの手技中に高感度カテーテルを用いた心機能解析を行うシステムを準備中であり、カテーテルと併せて約300万円の支出の予定をしている。その他、米国のAHA学会などでの成果発表を検討している。
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