研究課題/領域番号 |
19K08595
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
神崎 秀明 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60393229)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 左室拡張障害 / 大動脈弁狭窄症 / 心臓カテーテル検査 / 左室スティフネス |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、経カテーテル大動脈弁留置術後の臨床転帰に左室拡張能が与える影響を、心臓カテーテル検査を用いて評価し、検討することである。 心機能を高精度カテーテルを用いて精密測定した心不全患者において、本来、経カテーテル大動脈弁留置術後の大動脈弁逆流を血行動態的に評価する指標である"AR index"が、心エコー上、逆流を認めないにも関わらず異常値を示す問題で、それが左室拡張能と関連していることを見いだし、Int Heart J誌に投稿し採択された。 また、大動脈弁逆流は、しばしば心エコーによるカラードプラ法では評価が困難なことがある。そのような場合、逆流の重症度をいかに評価するかについて検討を行った。3次元心エコー法を用いて逆流の縮流部に着目して評価を行う3D VCA法が、従来法との良好な相関を認め、その有用性について、Echocardiography誌に投稿し採択された。 そして、術前に左室拡張性を心臓カテーテルで評価できた83症例について解析を行った。左室の拡張指標の一つである拡張期のスティフネスを計算し、正常群と高値群の2群に分類して比較検討を行ったところ、両群間での背景においては、カテーテルで計測した大動脈弁狭窄の程度が若干、高値群で重症であり、採血検査でBNPが高値を示した以外、経カテーテル大動脈弁留置術の手技や、合併症、その結果について、両群間で有意差を認めなかった。しかしながら、心不全および心臓死で定義した有害心イベントについて比較すると、スティフネス高値群では、有害心イベントが有意に多く発生していた。また、有害心イベントに関して、多変量解析を行った結果、左室スティフネスが独立した予後規定因子であることが証明された。これらについて、米国心臓協会年次学術集会(AHA)および日本循環器学会学術集会(プレナリーセッション)にて、発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術前にカテーテルを用いて左室拡張能が評価できた症例の予後に関する研究については、学会での報告を経て、現在、論文作成中であり、さらに、実際に経カテーテル大動脈弁留置術中の左室拡張能の変化、またその長期予後について、データをまとめているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点でカテーテルを用いて計測した左室拡張能指標が、経カテーテル大動脈弁留置術後の臨床転帰に及ぼす影響に関しては、これまでの検討で一定の証明ができたと考えているが、一回心拍出量を正確に計測する必要性から症例数が限られてしまった。広く臨床で役立てるためには、より簡易で、非侵襲的に評価が可能な方法へと発展させる必要性がある。そこで、今後は、実際に経カテーテル大動脈弁留置術の前後で、比較的入手しやすいカテーテルで計測されたパラメータを用いた拡張性指標について、そして心エコー法を用いた非侵襲的拡張性指標について、それぞれの有用性を検討していく予定である。 ただ、心エコー法を用いた左室拡張能に関する一般的な評価方法では、その精度に課題があり、対応策として、カテーテル法を用いて計測した指標との相関をみながら、探索的に新規指標を検討していくことも考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高額な圧精密測定用のカテーテルを可能なかぎり多く購入して研究する予定であったが、病院の移転によりそのシステムを利用するには、高額な機器をさらに購入する必要があることが判明し、現実的には実施不可能な状況となったため、現在はそれよりは安価であるが高価なノイズフィルターを用い、理想的ではないけれど、高精度に近い圧波形を記録して研究を行っている。 今後は、可能ならば、心臓の血行動態を高精度に計測可能な代替システムを購入し、症例数はかなり限定されるものの、将来的な研究に生かせるような基礎的な研究に研究費を使用することを検討している。
|