研究実績の概要 |
研究計画初年度の研究に関しては、閉塞性無呼吸症候群(OSA)患者の血液検体100例を用いて動脈硬化疾患に関連した自己抗体の同定・解析研究を進めた.これまで同定したCOPE抗体(Matsumura T, Terada J, et al, 2017 J Clin Sleep Med),抗NBL抗体(Matsumura T, Terada J, et al 2018 PlosOne)につづいて、新たな自己抗体-抗SNX-16(Sorting nexin 16)抗体について解析した. 具体的には,OSA患者82名,急性冠症候群(ACS)患者96名,健常者(HV)64名を対象に,血清中の抗SNX16抗体値をamplified luminescence proximity homogeneous assay(AlphaLISA)法により測定し,測定値と各種臨床データとの関連性を評価した。OSA患者は診断の睡眠ポリグラフ検査入院時,ACS患者はACS発症時に採取した血清を用いた。 その結果,抗SNX16抗体値はOSA患者とACS患者において健常者よりも有意に高値であった。またOSA患者では重症OSA患者もしくはCVD既往のある患者において有意に高値であった。OSA患者における抗SNX16抗体値は、BMI、AHI、Arousal Index、Mean SpO2、CVD(心血管疾患)既往との相関関係が確認された。また抗SNX16抗体値の上昇は,OSA患者のCVD既往に対する有意な予測因子となる可能性が示唆された。 それらの結果を、英文学術誌に報告した(Diagnostics (Basel). 2020 Jan 27;10(2). pii: E71. doi: 10.3390/diagnostics10020071. 今回の報告で同定した抗体が、今後の動脈硬化マーカー候補となる可能性が考えられた。また今回、動脈硬化疾患を多数合併した一例の血清を用いて、網羅的検索のためにプロテインアレイを使用して検討した。現在解析中である。それらについて、欧州呼吸器学会学術集会(スペイン,マドリード)に参加して、世界の研究者らとディスカッションした。
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