研究実績の概要 |
研究計画3年目の研究に関しては、睡眠呼吸障害を呈していると想定される症例の血液検体を用いて動脈硬化疾患に関連した自己抗体の同定・解析研究を進めた.これまで同定したCOPE抗体(Matsumura T, Terada J, et al, 2017 J Clin Sleep Med),抗NBL抗体(Matsumura T, Terada J, et al 2018 PlosOne)に続いて、本研究計画の中で2020年に新たに報告した自己抗体-抗SNX-16(Sorting nexin 16:Katumata Y, Terada J, et al 2020 Diagnostics)抗体についても解析を進めている. 具体的には,これまで自己抗体-抗SNX抗体を測定評価した睡眠時無呼吸症候群患者200名に対して,それぞれの抗体値が高い例が心血管イベント発生を生じているかについて調査を行った.診断検査時の血清で抗体価高値が判明している患者のうち,最大5年経過している例がいるため,外来診察及びカルテ上で追跡が難しい例は,電話で確認を行った. その結果,重大な動脈硬化性疾患を発症していたのは6例であった(脳梗塞2名,心筋梗塞2名,腹部大動脈解離1名,下肢動脈閉塞1名).しかし,当初の仮説と異なり,睡眠時無呼吸症候群診断検査時の血清で評価した抗SNX16抗体値と動脈硬化性疾患発症に相関はみられなかった. 考えられる要因として,観察期間が5年間と短いこと,今回評価した睡眠時無呼吸症候群患者の平均年齢は59才と若かったことも影響し心血管イベントを発症した例が6名と少なかったこと,また睡眠時無呼吸症候群に対していずれも持続的陽圧換気療法(CPAP)による治療介入があったことなどが挙げられた.今後は,複数の自己抗体値を組み合わせて動脈硬化性疾患発症の予測因子とすることが可能かを検討する.
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