研究課題/領域番号 |
19K08597
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高宮 里奈 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (70365419)
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研究分担者 |
齋藤 充史 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00768939)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂質代謝 / 肺胞微石症 / COX-2 |
研究実績の概要 |
種々の肺疾患における脂質環境の変化の検証を行うことを目的とした。肺疾患の中から、肺胞微石症における脂質代謝変化を肺胞微石症の原因遺伝子であるナトリウムリン酸共輸送体(Npt2b)欠損マウスの肺、および肺胞洗浄液(BALF)を用いたリピドミクス解析、各種Phospho lipase(PL) A2の発現解析を行った。 その結果、15週齢のNpt2b欠損マウスでは、肺内に微石が蓄積し、炎症性の脂質メディエーターの産生に関わるシクロオキシゲナーゼ (COX)-2の発現が亢進していた。リピドミクス解析を行ったところ、その上流にある多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸(AA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のいずれもその産生量が亢進していた。また、COX-2由来の炎症性メディエーターであるプロスタグランジン(PG)D2、PGE2、15d-PGJ2などの産生が亢進していた。また、分泌型ホスホリパーゼA2 (sPLA2)の中で、肺サーファクタントの分解に関わるPLA2G5の発現の亢進がみられた。次にクエン酸第二鉄を35日間経口投与を行なった。その結果、Npt2b欠損マウスの肺内の微石の蓄積が顕著に低下し、またCOX-2の発現の低下も認められた。 以上の結果より、Npt2bの欠損は肺内に微石の蓄積とCOX-2の発現上昇に伴う炎症性脂質メディエーターの産生亢進をもたらすが、これらはリン吸着剤の投与により抑制できることから、リン吸着剤は肺胞微石症の有効な治療法になりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
肺胞微石症における炎症原因の1つにCOX-2の発現と、その下流の炎症性脂質メディエーターが関与する可能性を示すことができた。また、肺胞微石症の病態の悪化や、改善マーカーとしてのCOX-2やその代謝産物の有用性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
肺サーファクタント量は、肺胞Ⅱ型肺胞上皮細胞による合成・分泌と肺胞マクロファージによる分解のバランスで調節され、そのバランスの異常が呼吸器疾患形成につながる。今年度は、肺胞Ⅱ型肺胞上皮細胞、肺胞マクロファージの両者の機能に異常が起きることが報告されている特発性肺線維症に着目し、ブレオマイシン誘発性肺線維化モデルを用い脂質代謝解析、およびPLA2群の発現解析を行う。具体的には、ブレオマイシン塩酸塩をアルゼット浸透圧ポンプを用いて100mg/kg (0.5 μl/hour)で皮下投与し、肺内に線維化が認められる4週間後の肺胞洗浄液、および肺組織を用いリピドミクス解析、網羅的PLA2の発現解析を行う。変動のあったPLA2に関しては、組織染色を行い線維化や炎症細胞の集積と関係するか検証を行う。 そして、最終的には臨床サンプルを用い、脂質プロファイルをリピドミクス解析により分析し、モデルマウスの結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な物品調達を行い、また予定していた研究打ち合わせを行わなかったため。 今回未使用額については令和2年度の予算とともに消耗品や、研究打ち合わせの費用として使用する予定である
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