本研究ではマウスへのブレオマイシン気道内投与による肺線維症モデルを用いて局所TGF-β活性化機構に関わる遺伝子Aの役割を解析し、そのメカニズムを明らかにすることを目的として実施した。最終年度は血管内皮細胞特異的な遺伝子Aの役割について、これまでの遺伝子Aのコンディショナルノックアウトマウスでの解析結果を踏まえて、内皮細胞自身における遺伝子発現への影響について調べた。その結果、数系統の炎症細胞への作用を持つ分泌因子群の発現が遺伝子Aによって制御されることが示唆された。炎症細胞発現マーカーの免疫組織化学染色により関与する細胞種を明らかにすることを試みたがいずれにおいても細胞数自体は遺伝子Aの欠失による変化を示さなかった。重要なことにこれまで知られていた遺伝子AによるTGF-β活性化作用に関しては、Smadの活性化状態であるリン酸化Smadの免疫化学染色による検討結果から、ブレオマイシンによる明らかなシグナル活性化細胞種の存在を観察できた。一方で遺伝子A発現欠失の影響が認められず、TGF-βシグナル以外の作用を介したメカニズムの存在が示唆された。 これを踏まえて当初注目していたTGF-βシグナルへの作用を離れて遺伝子Aの作用機構を明らかにする必要が生じた。そこでブレオマイシンによる炎症肺組織からシングルセル遺伝子発現解析を行い、遺伝子Aの欠失の影響について調べたところ、特定の細胞クラスターの遺伝子発現に影響を与えていることが明らかになった。
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