研究課題
本研究は、Driver遺伝子異常を有する肺がんにおける「分子標的治療の初期抵抗に関わるシグナル指向性」を明らかにする。具体的には、治療導入時に誘導される薬剤抵抗性細胞の分子機構の解明とその克服治療法の開発ならびに治療開始前に存在する治療抵抗性因子の同定を目指す。本課題に相当するin vitroおよびin vivo研究を通じた「分子標的治療の初期抵抗性」を解明した後、臨床検体を用いて効果予測に関わる候補因子の臨床的重要性について評価を行う。以上の研究成果を基盤に「初期抵抗性」細胞の出現阻止を目指した新規治療法およびバイオマーカーの開発を通じて、臨床応用に発展させることを目的に以下の研究を検討した。1. 複数の肺がん細胞株のうち、EGFR変異肺がん細胞の一部、およびALK変異肺がん細胞のごく一部でAXL阻害の付加的な細胞増殖抑制の併用効果を認めた。よって、本併用治療の標的としては、EGFR肺がんがより有望であることを明らかにした。2. EGFR肺がん細胞ではAXLシグナル制御を介した細胞生存に関わるfeedback機構に関わる分子として、SPRY4の関与を解明することができた。3. EGFR変異肺がんにおいて、AXL高発現細胞株ではALK低発現細胞株よりも、EGFR阻害薬の治療効果が乏しいことも見いだし、EGFR阻害薬の治療効果予測因子として、治療前AXL発現が期待されることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
肺がん細胞株のうち、EGFR変異肺がん細胞の一部、およびALK変異肺がん細胞のごく一部でAXL阻害の付加的な細胞増殖抑制の併用効果を認め、本併用治療の標的としてEGFR肺がんにおいてより有望であること、AXLシグナル制御を介した細胞生存に関わるfeedback機構に関わる分子としてSPRY4分子が関与すること、EGFR変異肺がんにおいてAXL発現がEGFR阻害薬の効果予測因子として有望であることを明らかにした。以上の研究成果は、in vitro実験を用いた解明が予想通り進められていることから、本年度はおおむね順調に進展していると考えられる。
本年度の研究で得られた知見を基に、次年度では、EGFR阻害薬とAXL阻害薬の併用治療の治療効果予測因子の同定、EGFR阻害薬に対する治療抵抗性細胞の樹立とその治療抵抗性機序の解明、さらにマウスin vivoモデルを用いた本併用治療の有効性・安全性の検証などの検討を進めていく予定である。
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Nat Commun.
巻: 10 ページ: 259
10.1038/s41467-018-08074-0.