研究実績の概要 |
乳び胸水と血清から分離した各EVs中のmiRNAの網羅的発現解析を行い、LAM細胞特有の蛋白質発現を誘導しうる候補miRNAを同定する予定であったが、十分なRNA量が得られず断念した。保存中に分解されてしまった可能性を考えている。1年目に、1例のLAM患者の乳び胸水から分離したLAM細胞クラスター(LCC)を分析してTSC2変異のallelic frequencyは20%弱であり、何らかの機序によりLCC内でphenotype transferが起こっていることを確認したが、今年度は2例の新規LAM症例のLCCの解析が実施でき、再現性が確認できた(合計3例)。また、TSC2変異解析から、LCC内にTSC2の2つの体細胞変異をもつtwo-hit細胞を同定することに成功した。これらの結果からLCCは遺伝学的背景の異なるLAM細胞からなることが確認でき、two-hit細胞と周辺野生型細胞との細胞間コミュニケーションにより類似の形態をとる集団に変化し病巣を形成していることを示唆する根拠を深めることができた。また、LAM細胞の起源は神経堤細胞集団由来と推測されているが、各種の神経細胞系マーカー(nestin, peripherin, Neuron specific β-III tubulin, NSE, GFAP, CD56, synaptophysin, chromogranin A)の発現を免疫組織化学的手法で検討し、8種類のマーカー中4つのマーカーの高発現を認めた。これらの成果から、LAM病巣は少数のtwo-hit LAM細胞と周囲の野生型細胞のコミュニケーションにより、起源と推測される神経間葉系細胞の一部の性質を保持したまま正常細胞とは異なる細胞コミュニティを形成する病態であることが示唆された。
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