研究実績の概要 |
癌治療にける抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬は、新たな有害事象として自己免疫疾患の発症が報告されているが、それを予測するバイオマーカーは知られていない。予備実験から肺癌症例の約15%は既知の自己抗体が陽性、それ以外の症例でも~80%は未同定の細胞成分に対する自己抗体が陽性であった。 本研究では免疫チェックポイント阻害薬で治療される肺がん患者の自己抗体を網羅的、経時的に行う。まず各種自己抗体の測定条件、標準化のための検討を行った。免疫沈降法および蛍光抗体法(HEp-2細胞スライド)に関しては手技は確立、安定している。酵素免疫測定法(ELISA)で各血清の自己抗体レベルを比較するためには標準曲線にもとづく統一したユニット化が必要であるが、当研究室で既に確立しているものと、新しく検討が必要なものがあった。新たに検討する甲状腺自己抗体検出のための抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、サイログロブリン抗体に関しては、標準希釈曲線作成のための標準血清を慢性甲状腺炎と診断されている患者血清10例で検討し、初期希釈倍率、段階希釈の倍率、ユニットを決定した。ELISAでは他にRo60, Ro52, CENP-A/B, DFS70, Jo-1, topoisomeraseI,MDA5, EJ, PL-7, PL-12, KS, Ki/SL, RPA2に対する抗体を測定する。症例数が少ないかELISAでの反応性があまりよくないPL-7, PL-12, KS, RPA2に関しては、十分な血清量があり適切な希釈曲線を描ける血清が確立されておらず、引き続き検討するが、他の特異性に関しては標準血清としてスクリーニングに利用できるものが確立されている。患者の登録、血清、臨床情報の収集は基礎的実験と並行して進めている。
|