研究課題
癌治療において抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による自己免疫疾患の発症が報告されているが、それを予測するバイオマーカーは知られていない。肺癌症例の約15%は既知の自己抗体が陽性、それ以外に約80%は未同定の細胞成分に対する自己抗体が陽性であった。一般健常人ではほとんどみられない疾患標識抗体が検出される例がみられるのに加え、一般にも約0.5%で検出される抗Ro52, Ro60, Su/Ago2などの自己抗体が5-10%にみつかった。自己抗体は関連する疾患の症状、診断に先行して産生されることが報告されている。ICI投与後の免疫関連有蓋事象(irAE)として、自己免疫性甲状腺炎は最も多いことが知られている。ICIを投与された肺癌患者9例のICI投与前後での甲状腺自己抗体と甲状腺機能が評価された。9例のうち、4例で甲状腺ホルモンF-T4の上昇、3例では甲状腺機能低下症を生じ、継続的な甲状腺ホルモンの補充が必要となったが、このうち2例はICI投与前から、甲状腺自己抗体が陽性であった。ICI投与前から甲状腺自己抗体陽性の2例は2例とも、甲状腺ホルモンの補充が必要な機能低下症となった。抗Ro52/TRIM21抗体は、種々の全身性リウマチ性疾患に高頻度で検出されるが、強皮症、炎症性筋疾患、混合性結合組織病(MCTD)などで、間質性肺炎と関連し、特に重症、治療抵抗性の間質性肺炎で予後不良との関連が報告されている。ICI投与後に間質性肺炎を発症したのは5例であったが、5例中2例はICI投与前から抗Ro52抗体が陽性、別の1例はICI投与前は陰性であったが、投与後、陽性化し、間質性肺炎を発症した。ICI投与後のirAEに関し、甲状腺自己抗体が甲状腺自己免疫疾患の発症予測に有用であること、抗Ro52抗体が間質性肺炎予測に有用な可能性が示唆された。
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