研究課題/領域番号 |
19K08620
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山谷 睦雄 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (60261640)
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研究分担者 |
西村 秀一 独立行政法人国立病院機構(仙台医療センター臨床研究部), その他部局等, 医長・室長 (50172698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | C型ライノウイルス / PCR法 / ウイルス放出量定量化 / マクロライド / 炎症性サイトカイン / 気道上皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究において、これまで確立されていなかったC型ライノウイルスの放出量定量化の方法を確立し、薬剤によるウイルス放出量抑制効果および閉塞性呼吸器疾患におけるC型ライノウイルスの増殖の変化を検討するのが目的である。本年度の研究実績は以下の通りである。 1)昨年度に続いてC型ライノウイルスのヒト鼻腔粘膜上皮細胞からの放出を確認した。本年度は03型(RV-C03)に加えて25型(RV-C25)のC型ライノウイルスをヒト鼻腔粘膜上皮細胞に感染させ、粘膜測洗浄液(airway surface liquid)にウイルスが放出されることを、ウイルスRNAを測定する方法で確認した。さらに、同様の方法でA型ライノウイルス(RV-A16)およびB型ライノウイルス(RV-B14)の細胞外放出も検出されることが明らかとなった。 2)RV-C03の細胞側感染受容体であるCDHR3のmRNAがヒト鼻腔粘膜上皮細胞に発現することを確認した。また、マクロライドであるバフィロマイシンをヒト鼻腔粘膜上皮細胞に作用させるとCDHR3 mRNAの発現量が減少することが明らかとなった。この結果より、バフィロマイシンが酸性エンドソーム数の減少に加えて受容体の減少も介してRV-Cの増殖抑制に関与していることが示唆された。 3)炎症性物質であるインターロイキン(IL)-6およびIL-8の培養液濃度がRV-C03感染で増加することを昨年度確認した。本年度は、バフィロマイシンを細胞に作用した場合にこれらの炎症性物質の放出量が減少することを確認した。この結果、バフィロマイシンがC型ライノウイルス感染に伴う気道炎症を抑制する効果を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に予定していた計画をおおむね実行した。すなわち、1)C型ライノウイルス培養液定量はRV-C03に加えてRV-C25でも測定できることを確認した。2)バフィロマイシン、クラリスロマイシン、EM900などの薬剤によるC型ライノウイルス増殖抑制効果はすでに確認している。3)C型ライノウイルス増殖による炎症性物質の放出増加は昨年度確認した。本年度はサンプル数を増やした。それに加えて、バフィロマイシンによる放出量の増加抑制を本年度に確認した。4)気管支喘息の症例からの細胞を集積し、RV-C03 の放出量を測定した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、以下の研究を実施する予定である。1)RV-C03 RNAの放出抑制作用を認めたクラリスロマイシン、EM-900およびエンドソームのpHを酸性化するNa+/H+交換チャネル阻害薬であるEIPAに関して、感染受容体CDHR3 mRNAの発現に対する抑制効果を検討する。2)気管支喘息の症例から採取した細胞を用いて受容体遺伝子多型を解析し、RV-C03の放出量と受容体遺伝子多型との関係を検討する。RV-C03に接着しやすいCDHR3遺伝子多型が報告されており、RV-C03 RNA放出量との関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
受容体遺伝子解析の一部分を次年度に変更したため予算の使用額が少なくなった。この予算は次年度の遺伝子解析に使用する予定である。
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