膠原病は全身に炎症をきたす難治性疾患であり,甚大な健康被害を与え続けている.特に肺病変のひとつである間質性肺炎は合併頻度が高く,多くの膠原病の予後不良因子であることから,その病態解析と有効な治療法の開発が切望されている.一方,樹状細胞(Dendritic Cell:DC)を介した免疫誘導の活性化は自己免疫疾患に必須の生体反応である.申請者らは,効率的で優れたDCの免疫調節能を利用し,動物モデルで各種腫瘍および感染症に,極めて有望なワクチンを開発してきた.本研究はこれらの技術を応用し,免疫反応を抑える制御性DCにより,肺における過剰な免疫反応を抑制することで,治療選択の限定された膠原病に伴う間質性肺炎に対し,治療ワクチンおよび複合免疫療法としての研究基盤を確立することが目的である.上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに,本研究はマウスの関節リウマチに伴う間質性肺炎モデルを用いて制御性DCの治療応用に展開するための基盤となる研究を行ってきた.一方で,膠原病をはじめとした間質性肺疾患においては,近年急速に多くの事象が明らかとなってきている.これらの現状をふまえ我々は,進行経過を辿る症例群の疾患進行因子の解析を,ヒトの肺組織も用いて同時に行ってきた.その結果,肺病変局所での炎症細胞浸潤の程度も予後に影響は与えていたものの,線維化性間質性肺疾患の予後因子とされる線維芽細胞巣がより強い予後因子となっていることが示され,予後不良群に共通する病態は,多くは持続性の線維性変化によることが解ってきた.これらのことから概ね炎症性病態のみを標的としたDC療法の効果は極めて限定的であり,現時点では医学的効果のみならず実験面および臨床応用後の対費用効果の面からもその有用性は乏しいことが考慮された.以上から引き続き,より効果的な治療法を開発するためのターゲットを探索する研究を継続している.
|