研究課題
鉄代謝異常の素因のある個体では、喫煙暴露により鉄代謝恒常性が破綻し、ミトコンドリア機能不全から酸化ストレス産生に至り、末梢気道上皮の上皮再生能が失われるため、末梢気道の破壊とリモデリングが起こる、という仮説を、ヘモペキシンノックアウトマウスを用いた喫煙暴露実験にて検討した。野生型マウスとヘモペキシンノックアウトマウスに1日15本の喫煙暴露を24週間行った後に、気管支肺胞洗浄(BAL)、肺組織標本評価、血清、組織、BAL液中の鉄の定量を行った。結果、ヘモペキシンノックアウトマウスと野生型マウスに、喫煙暴露による肺気腫形成の程度やBAL液中の炎症細胞数、蛋白漏出量、鉄量に差をみとめなかった。しかし、ヘモペキシンノックアウトマウスでは、末梢気道上皮の菲薄化が認められた。以上の結果より、ヘモペキシンが喫煙暴露に対する末梢気道の再生、恒常性維持に関与している可能性が示唆された。今後はヒト肺組織におけるヘモペキシン発現の検討やマウス肺におけるミトコンドリア機能の評価を行う予定である。また、平成33年度の計画としていたヒトCOPD症例におけるバイオマーカーとしての有用性探索の準備として、胸部CTを用いた形態評価手法の向上のための検討を行った。超高精細CTを用いた末梢気道評価法を確立し、報告した(Eur J Radiol. 2019 Nov;120:108687)
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた実験において、当初の計画どおり、ヘモペキシンと喫煙に対する生体応答の関連を検討できた。
計画どおり、マウスで得られた病理学的表現型を規定する分子学的メカニズムを探索する予定である。特にミトコンドリア機能異常は治療ターゲットの発見につながる可能性がある。また、マウスで得られた知見がヒト肺において認められるかヒト肺組織を用いた検討を行う。
マウス実験の解析に必要な物品の一部について新規に購入必要なかったため、残高が50391円生じた。翌年度のマウス実験の継続とヒト肺解析のために助成金を使用する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
European Journal of Radiology
巻: 120 ページ: 108687~108687
10.1016/j.ejrad.2019.108687