鉄代謝異常の素因のある個体では、喫煙暴露により鉄代謝の恒常性破綻から過度の酸化ストレスを生じ、末梢気道上皮の恒常性維持が損なわれるため、末梢気道の破壊とリモデリングが起こる、という仮説を、前年度に作成した喫煙暴露ヘモペキシンノックアウトマウスと今年度追加で作成した組織標本や凍結肺組織サンプルを用いて、詳細な解析を本年度は行った。
24週間の喫煙暴露を行った野生型マウスとヘモペキシンノックアウトマウスにおいて、前年度の手動での解析では喫煙暴露による肺気腫形成の程度に有意差を認めなかった。しかし、本年度追加したサンプルも含めて肺組織解析を、コンピューターを用いた自動解析したところ、肺気腫の指標である平均肺胞間距離の増大を確認したた。一方、BAL液や組織中の炎症細胞数、鉄沈着量には引き続き差を認めなかった。しかし、ヘモペキシンノックアウトマウスでは、肺組織中のメタロプロテアーゼの発現増強を認めた。さらに、ヒト肺組織におけるヘモペキシン発現の検討を行った。凍結切片を用いた免疫染色では、ヘモペキシンを検出することができなかった。抗体の問題が考えられたため、恒常的にヘモペキシンを発現する肝臓のホルマリン固定組織切片にて免疫染色の条件検討を行った。結果、肝臓において良好な染色が可能となった。現在、ヒト肺のホルマリンン固定組織切片を肺組織ライブラリより作成中である。また、ヒトCOPD症例におけるバイオマーカーとしての有用性探索のために引き続き胸部CTを用いた形態評価手法の検討を行い、吸気呼気CTを用いた解析を行い、肺気腫と気道病変の関連について報告した(ERJ Open Res. 2021;7(1):00672-2020)
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