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2020 年度 実施状況報告書

気道ウィルス感染におけるPD-L2の意義解明とそれに基づく新規治療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 19K08626
研究機関九州大学

研究代表者

松元 幸一郎  九州大学, 医学研究院, 准教授 (60325462)

研究分担者 福山 聡  九州大学, 大学病院, 講師 (50380530)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードウイルス / 2本鎖RNA / インターフェロン / PD-L2 / PI3キナーゼ / 呼吸器 / PD-L1
研究実績の概要

ヒト初代気道上皮細胞の培養実験系において、合成2本鎖RNAであるpoly I:C刺激、あるいはヒトメタニューモウイルス感染によって免疫チェックポイント分子であるPD-L1およびPD-L2の発現が誘導される。この分子発現の制御機構について検討を進めた。我々は以前の研究から、poly I:C刺激によるPD-L1誘導がPI3キナーゼデルタ阻害薬によって抑制されることを報告していた。今回の実験系で検証すると、デルタ阻害薬によってやはりPD-L1発現は誘導されるが、PD-L2発現は逆に促進されることが判った。PI3キナーゼデルタ阻害薬はpoly I:C刺激によるI型およびIII型インターフェロン応答を増強することを見出していたので、PD-L1およびPD-L2の発現とインターフェロン応答の関係性について検討した。高濃度のリコンビナントのI型インターフェロン投与は気道上皮細胞におけるPD-L1、PD-L2いずれも発現を誘導した。また、デルタ阻害薬はpoly I:C刺激によるインターフェロン応答誘導性転写因子IRF-3のリン酸化を促進することを明らかにした。さらにはIRF-3リン酸化を担うTBK1のリン酸化がやはりデルタ阻害薬処置によって促進されることを見出した。これらの所見はヒトメタニューモウイルス感染の実験系でも同様に確認された。すなわち、ウイルス感染により生じるインターフェロン応答はPD-L1, PD-L2の発現を促進するが、そのインターフェロン応答はPI3キナーゼデルタによって負の制御を受けている。一方PI3キナーゼデルタはPD-L1発現には正の制御をかけているが、PD-L2発現には影響しない。その結果、デルタ阻害薬を処置するとPD-L1発現は正と負の制御により相殺され、PD-L2だけがデルタ阻害薬によるインターフェロン応答の増強をうけて発現が増強されることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

poly I:C刺激によるインターフェロン応答とPD-L1, PD-L2の発現の関連性が明らかになり、さらにPI3キナーゼデルタがそれぞれの免疫チェックポイント分子発現に対して、異なる制御的役割を担っていることが解明できた。その詳細について、インターフェロン応答の上流にある転写因子IRF-3や調節キナーゼのTBK1のレベルまで生化学的手法によりPI3キナーゼデルタの関与を検証することができた。また、ヒトメタニューモウイルス感染の実験系においても同様の結果を得ることができた。

今後の研究の推進方策

これまでの実験成果は古典的なPI3キナーゼデルタ阻害薬であるIC87114を用いて得られた。今後はマウスへのpoly I:C気道投与モデルにおいて、実際に幾つかの疾患の治療候補薬として臨床的検討がすすんでいるPI3キナーゼデルタ阻害薬を用いて同様の効果があるかどうかを試し、ウイルス感染症の治療薬としての有用性を検証する。

次年度使用額が生じた理由

論文校正費に充当するつもりで(B-A)を留保していたが、最終的に年度末までに校正をおこなうに至らず、次年度使用額として計上した。

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公開日: 2021-12-27  

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