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2019 年度 実施状況報告書

抗酸菌の情報伝達系を介したバイオフィルム形成機構の解明と除去剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K08629
研究機関大阪市立大学

研究代表者

西内 由紀子  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00333526)

研究分担者 大原 直也  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70223930)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードバイオフィルム / 情報伝達系 / 2成分制御系 / センサーヒスチジンキナーゼ / 非結核性抗酸菌 / MAC菌
研究実績の概要

申請者は、非結核性抗酸菌のMycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)が低酸素条件下でバイオフィルムを形成することを見出した (Sci Rep. 2017)。この事実は、MAHが低酸素条件を感知し、バイオフィルムを形成することを示唆している。本研究では、バイオフィルム除去剤を開発するために、低酸素を感知する情報伝達系を同定してバイオフィルム形成機構を解明することである。まず、大気条件(バイオフィルム非形成)と、低酸素条件(バイオフィルム形成)で培養した菌体からメッセンジャーRNA を精製して全遺伝子の発現状況(トランスクリプトーム解析)を比較した。その結果、低酸素条件で発現が増える遺伝子群のうち、低酸素を感知することが期待される2成分制御系のMAV_RS11960を同定した。本遺伝子は、低酸素や光に反応するドメインとして知られているPASドメインと、ヒスチジンキナーゼドメインを有していることから、低酸素を感知するセンサーヒスチジンキナーゼである可能性が高い。2成分制御系遺伝子はセンサーとレギュレーターが並んで存在していることが多いが、残念なことに本遺伝子は単独で存在していたため、対となるレスポンスレギュレーター遺伝子の同定には至らなかった。次に、本遺伝子の過剰発現株を作製し、そのバイオフィルム形成能を野生株と空ベクター株と比較した。その結果、過剰発現株のバイオフィルム形成は有意に増加し、同定した遺伝子が確かに関与していることが明らかになった。
抗酸菌のうち結核菌では、2成分制御系の研究が行われ、幾つかその機能が知られているが、MAHでは今までに全く知られていない。本研究成果は初めて機能を明らかにするMAHの2成分制御系の一つとなり、重要な研究成果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初予定通り、トランスクリプトーム解析を実施し、解析ソフトRを用いて有意な発現変動遺伝子を同定したところ、ただ一つのセンサーヒスチジンキナーゼを同定することができた。この遺伝子は、ドメイン構造からも目的とするセンサーヒスチジンキナーゼであることが強く示唆され、予想以上の成果であった。残念なことに、本遺伝子はオーファン遺伝子だったので、対となるレスポンスレギュレーター遺伝子の同定には到らなかった。
次に、このセンサーヒスチジンキナーゼの過剰発現株を順調に作成することができた。本研究で用いている菌種MAHは欠失変異株の作成が非常に困難であることが知られている。本研究においても、欠失変異株の作成はできなかった。この過剰発現株は野生株、および空ベクター挿入株に比べてバイオフィルム形成が有意に増加した。このことから、同定したセンサーヒスチジンキナーゼが、目的とする遺伝子であることが強く示唆された。このように当初計画通りに進捗している。

今後の研究の推進方策

当初計画に従って過剰発現株を用いてトランスクリプトーム解析を実施し、発現変動遺伝子の変化を解析する。発現変動だけでなく、KEGGパスウェイ解析、GO解析結果を総合してレギュロンを同定し、機能を推定する予定である。そのための予算も計上している。

次年度使用額が生じた理由

本年度に使用予定のトランスクリプトーム解析と、レギュロンの同定やバイオフィルム形成機構解析に当初予定より多く必要であることがわかったため、ゆとりを持って執行できるようにした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 抗酸菌のバイオフィルム形成と休眠時遺伝子発現比較2019

    • 著者名/発表者名
      西内由紀子、大田篤、矢野大和、岩本朋忠、阿戸学、松本壮吉、大原直也、丸山史人
    • 学会等名
      第33回バイオフィルム学会

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公開日: 2021-01-27  

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