研究課題
2型肺胞上皮細胞は特発性肺線維症の病態において重要な役割を演じているが、培養の困難から研究が十分には進んでいない。本課題はこの技術的制約を克服するための研究である。本年度は、マウス・ヒト肺からの2型肺胞上皮細胞の分離、および培養方法の確立に主眼をおき研究をすすめた。まず、マウス肺よりMACS法を用いて純度の高い2型肺胞上皮細胞を分離し、コンディショナルリプログラミング法により長期培養するためのプロトコールを確立した。コントロールとして肝臓、腎臓の上皮細胞を同様の方法で培養し細胞を凍結保存した。長期継代後も臓器特異性が維持される事を確認した。次に、ヒト2型肺胞上皮細胞の分離・保存に向けた体制を構築した。ヒト肺は肺癌手術の非癌部を用いる事とし、呼吸器外科、病理部の協力の下、自治医科大学倫理委員会の承認を得た。約1cm3の肺組織からMACS法により2型肺胞上皮細胞を分離し、コンディショナルリプログラミング法により増幅した細胞を凍結保存した。細胞分離を行ったすべての肺から細胞保存が可能であった。背景となる肺疾患としては、健常肺に加えて、特発性肺線維症、COPDが含まれていた。凍結保存した細胞は、再度培養し増幅する事が可能であり、今後の解析が可能である事を確認した。来年度以降は、健常肺、疾患肺由来2型肺胞上皮細胞の蓄積を継続し、特発性肺線維症における2型肺胞上皮細胞の特性を明らかにするための解析を行う。
3: やや遅れている
ヒト肺からの細胞分離を行う曜日が限定される事から、2型肺胞上皮細胞の保存件数が当初予定より少なくなっている。
手術検体からの細胞保存を継続し、疾患肺由来2型肺胞上皮細胞からオルガノイドを作成し機能解析を行う。
物品購入の段階で差額が生じた。次年度の物品購入に使用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Respir Investig.
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10.1016/j.resinv.2019.11.003. Epub 2019 Dec 26.
Nat Commun.
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