研究課題
2型肺胞上皮細胞は特発性肺線維症の病態において重要な役割を演じているが、培養の困難から解析が十分には進んでいない。本課題はこの技術的制約を克服するため研究である。昨年度は、マウス肺から2型肺胞上皮細胞を分離し、コンディショナルリプログラミング法により長期培養するためのプロトコールを確立した。また、肺癌手術の非癌部からヒト2型肺胞上皮細胞を分離し、増幅した細胞を凍結保存するためのシステムを構築した。本年度は、健常肺、疾患肺由来2型肺胞上皮細胞の蓄積を継続すると共に、マウス上皮細胞を用いた機能解析をおこなった。肺胞の恒常性維持には、肺胞上皮細胞と肺胞内皮細胞・肺胞マクロファージとの相互作用が重要である。そこで、肺胞上皮細胞と肺胞マクロファージとの相互作用を調べるために、マウス上皮細胞と骨髄由来マクロファージとの共培養システムを構築した。その結果、肺胞上皮細胞と共培養した骨髄由来マクロファージは、肺胞マクロファージに特異的な形質を獲得する事が示された。一方、腎上皮との共培養では、同様の形質は得られなかった。さらに、トランスウェルを用いた共培養においても、同様の形質は獲得されなかった。この事から、肺胞マクロファージの分化には、肺胞上皮細胞との接触を介した相互作用が重要である事が示された。来年度は、肺胞マクロファージの分化に重要な肺胞上皮側の因子を同定する。さらに、ヒト上皮細胞を用いた共培養システムを構築し、疾患肺由来の上皮細胞が肺胞マクロファージに与える影響につき検討を行う。
4: 遅れている
手術検体の入手困難な時期が続き、ヒト肺胞上皮細胞の保存が、当初の予定より遅れている。また、オルガノイドを用いた機能解析が技術的困難のために遅れている。
オルガノイドを用いた肺胞上皮細胞の機能解析が困難であるため、評価方法を変更する。マウスで確立した方法を応用し、ヒト肺胞上皮細胞と単球由来マクロファージとの共培養システムを構築する。この系を用いて、疾患肺由来肺胞上皮細胞が肺胞マクロファージ、および疾患形成に与える影響につき検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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