研究課題/領域番号 |
19K08637
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
星野 友昭 久留米大学, 医学部, 教授 (00261066)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症性肺疾患 / サイトカイン / 肺癌 / 喘息 |
研究実績の概要 |
申請者らは気管支喘息において、IL-1ファミリーサイトカインIL-18がTh2細胞を分化誘導し、好酸球主体の気道炎症と気道過敏性を亢進させることを世界に先駆け証明した。加えて、IL-18の過剰発現がCOPD、間質性肺炎、炎症性腸疾患、Macrophage Activation Syndromeの発症に関与していることを報告した。リウマチ(RA)マウスモデルを用いた実験で、新規IL-1ファミリーサイトカインIL-38(IL-1F10)は抗炎症性サイトカインの機能を持つことを証明した。しかしながら、IL-38の炎症性肺疾患や発がんにおける役割は不明である。また、最近の研究で、IL-17Aの産生にIL-23だけでなく、IL-1ファミリーサイトカインIL-36/IL-36受容体のシグナルが関与していることが示唆されている。IL-38の受容体もIL-36受容体なので、IL-38がIL-36受容体のシグナルを介し、IL-17Aを制御する可能性が高い。 本研究で、IL-38欠損マウスを用いて喘息モデルマウスを用いた気道炎症の解析を行った。IL-38欠損マウスでは肺においてIL-5の発現が減少し、好酸球性の炎症が抑制された。これらの結果は、喘息患者でIL-38は炎症を誘導するサイトカイン(pro-inflammatory cytokine)であることが示唆された(M. Matsuoka, Kurume Med J. 2019 May 16;65(2):37-46. doi: 10.2739/kurumemedj.MS652009. Epub 2019 Mar 11.)。また、IL-38はマウス坦がん(tumor bearing)モデルで CD8(+) tumor-infiltrating lymphocyteを抑制してがんを増殖することを報告した(F. Kinoshita, Cancer Immunol Immunother. 2021 Jan;70(1):123-135. doi: 10.1007/s00262-020-02659-9. Epub 2020 Jul 11.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の最終研究成果は2021年度で出ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
近年、RNAウイルスセンサーであるretinoic acid-inducible gene (RIG)-Ⅰファミリーの一つであるMelanoma Differentiation-Associated Gene 5 (MDA5)に対する自己抗体測定が皮膚筋炎 (dermatomyositis; DM)において保険収載された。抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎合併間質性肺障害では、生存率28~40%と致死的な急速進行性間質性肺障害 (rapid progressive interstitial pneumonia; RP-ILD)の発症が多いことが臨床上大きな問題である。抗MDA5抗体は、DMにおける致死的なRP-ILD発症を予測する重要なバイオマーカーとして確立している。抗MDA5抗体陽性DM-RP-ILDの発症が冬季~春季、川沿いに多いという季節性と地域性があることからは、感染との関連が推測されている。 我々はこれまでDM-ILDの研究を行い、抗MDA5抗体陽性が予後良好因子であること (Respir Invest. 2017; 55: 24-32.)、抗MDA5抗体陽性例の予後予測に抗体価が重要であること、抗MDA5抗体陽性であっても、急性期を乗り越えた症例においては予後不良ではないことを報告した (Respir Invest. 2018; 56: 464-472.)。 申請者は、ヒトサーファクタント(SPC)プロモーターを用いてヒトMDA5の全長蛋白を肺特異的に高発現するトランスジェニックマウスを樹立した。加えて、in-houseのウサギ抗ヒトMDA5ポリクロナール抗体とマウス抗ヒトMDA5モノクロナール抗体を樹立した(論文未発表)。この新規マウスモデルを用いて、肺疾患における補体の役割の分子学的解析を行っている。
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