研究課題/領域番号 |
19K08648
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷澤 公伸 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (20639140)
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研究分担者 |
松田 文彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (50212220)
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上葉優位型肺線維症 / 間質性肺炎 / 肺移植 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)上葉優位型肺線維症pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)の臨床像の解明、2)PPFEの病態解明に基づくバイオマーカーの同定と治療標的 の探索である。2020年度の研究実績は次のとおりである。 1. 肺移植を施行されたPPFE患者を対象に、摘出肺の病理所見、画像所見を検討した。2002年~2017年に京都大学病院で肺移植を施行された18歳以上の間質性肺疾患131例のうち、59例に画像的なPPFE様所見を認めた。このうち、28例に病理学的なPPFE所見が見られ、13例が特発性PPFE、15例が続発性PPFEであった。画像所見と病理所見に乖離の見られる症例では、肺胞壁に弾性繊維の増生がなかった。病理学的なPPFEを有する症例は、るいそう、air trapping、扁平胸郭が特徴であった。特発性PPFEと続発性PPFEを比較すると、続発性ではnon-specific interstitial pneumoniaパターン、閉塞性細気管支炎、肉芽腫が多く見られたが、画像所見や肺移植後の生命予後に違いはなかっ た。 2. 肺移植を施行されたPPFE患者の摘出肺の保存検体からRNAを抽出し、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を施行した。PPFE14例(特発性7例、続発性7例)、特発性肺線維症11例の肺移植での摘出肺標本を対象にマイクロアレイ解析を行い、現在、データ解析中である。 3. 京都大学医学部附属病院を主たる研究機関とする、前向きの多施設共同研究を開始した。自施設ではすでに倫理委員会の承認を経て、PPFE10例を前向き に登録し、臨床情報(病歴、呼吸機能など)、画像、病理所見、遺伝子解析を含むオミックス解析用の血液検体を集積した。約10施設、100例を目標に症例集積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 肺移植を施行されたPPFE患者を対象にした病理所見、画像所見の検討は概ね順調に進んでいる。現在、論文作成中である。 2. 肺移植での摘出肺標本を用いたマイクロアレイ研究はやや遅れている。新型コロナウイルス感染症の流行が起こり、新規の実験に制約を生じたためであるが、過去症例の検体を用いることで症例数を確保し、マイクロアレイ解析を行った。 3. 前向きの多施設共同研究はやや遅れている。京都大学および関連病院をはじめとする多施設での倫理委員会の承認、準備は完了したが、新型コロナウイルス感染症の流行により、症例登録に制約を生じたためである。
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今後の研究の推進方策 |
1.マイクロアレイ解析結果から、疾患特異的な発現を示す遺伝子やパスウェイを同定し、遺伝子発現の定量的評価、肺標本の免疫組織染色、蛋白発現解析を行う。 2. 新型コロナウイルス感染症の流行状況を考慮しながら、多施設共同研究を継続する。10施設、100例を目標に臨床情報(病歴、呼吸機能など)、画像、病理所見、遺伝子解析を含むオミックス解析用の血液検体を集積する。ここで集積されたDNA検体を用いて、全ゲノムシークエンスWhole Genome Sequencing(WGS) を行い、発症に関与する遺伝的な背景を同定する。コントロールとして、京都大学医学部附属ゲノム医学センターが主宰するながはまコホートのゲノム情報を用 いる。 3. 摘出肺のマイクロアレイ解析で同定された疾患関連因子を対象に、多施設共同研究で集積された血液検体を用いて、マルチプレックス・システムを用いた血清蛋白質の網羅的な測定、解析を行う。当科に保存されたIPF症例の保存検体とも比較する。 4. 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科iPS細胞研究グループの協力のもと、PPFE患者およびIPF患者の血球細胞から疾患特異的なiPS細胞を作成する。 5. 新型コロナウイルス感染症の流行状況により、多施設共同研究、とくに血液検体やDNA検体の集積が困難であれば、臨床情報、画像の集積、疾患特異的な iPS細胞の作成、当科に保存された、既存の血液検体を用いたバイオマーカーの評価や血清蛋白質の網羅的な測定、解析を優先的に行う。
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