研究課題
下気道での細菌定着と重症喘息病態との関連性の解明. 縦走的・包括的検討について、令和1年度は、1) 重症喘息レジストリを開始し、臨床所見・画像情報・保存血清を集積し、遺伝子多型解析用の採血を行なった。2) 気流閉塞のある喘息例(COPD合併を含む)を前向きに登録し、microbiome検索用の喀痰採取、保存血清、呼吸機能検査結果などの集積を行なった。現在100例以上を登録し追跡中である。3)我々はこれまで黄色ブドウ球菌由来エンテロトキシン(SE)への感作が2型炎症を強めることを示してきたが、令和1年度はSEへの感作と下気道での細菌叢パターンとの関係を解析した。気管支拡張症・喘息例を集積し、喀痰培養、特に黄色ブドウ球菌と緑膿菌に着目し、検出された細菌とSEへの感作との関係について解析を行なった。結果、喀痰から黄色ブドウ球菌が検出された例では、非検出例に比しSEへの感作が有意に強く、末梢血好酸球数(最高値)は有意に高かった。さらに喀痰から黄色ブドウ球菌と緑膿菌ともに検出されなかった群、黄色ブドウ球菌のみ検出群、緑膿菌のみ検出群、両菌とも検出された群の4群でSEへの感作程度を比較すると、黄色ブドウ球菌のみ検出群で最もSE(A)への感作が有意に強く、総IgE値も高かった。末梢血好酸球数は4群間に差はなく、緑膿菌のみ検出例でも末梢血好酸球数が維持されていた。また気管支拡張の程度の指標である修正Reiffスコアは黄色ブドウ球菌のみ検出群で最も低かったが、SE(A)への感作との関連はなかった。以上、令和1年度は重症喘息・閉塞性気道疾患例を前向きに登録し、試料集積を行なうとともに、下気道での黄色ブドウ球菌の定着がSEへの感作を起点としたIgE高値に関わりうることを示した。
2: おおむね順調に進展している
※研究生・大学院生が精力的に試料集積・解析を行なっている。
1) で集積した重症喘息例の臨床病態、生物製剤への反応性、遺伝子型との関係を解析する。2)で集積した喀痰におけるmicrobiomeについて16sRNA, 18sRNA解析を行なうとともに、targetとなる細菌・真菌特異的PCRを行い、細胞分画、血清ペリオスチンなどの2型炎症マーカーとの関係を明らかにする。マクロファージについて、NLRP3, dectin などインフラマソーム、真菌定着に関する分子、自然免疫関連分子の染色を行う。
喀痰細菌叢の検索について、今年度中の検体集積を待って行なうため、次年度前半に行なう予定である。
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