研究実績の概要 |
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであるMDRVV003がヒトおよびマウス肺癌細胞株の細胞死を誘導するかどうかを評価した。使用した細胞株は、ヒト肺腺癌(A549, H1975, H2228, H23)、ヒト扁平上皮癌(EBC1, RERF-LC-A1, VMRC-LCD)、ヒト小細胞癌(H69, H209)、およびマウス肺腺癌(CMT64/61, LLC-1, 3LL)である。MDRVV003をMOI 0~10で検討した結果、細胞株により感受性は様々であった。A549, H1975, H23はMDRVV003に高感受性であり、MOI 1で細胞数は半数以下に減少した。一方、H2228とVMRC-LCDはMOI 10でも細胞死がほとんど誘導されず、非感受性であった。3LLは計画当初使用予定ではなかったが、他のマウス肺癌細胞株がMDRVV003に感受性が低かったために追加した。しかしながら3LLも低感受性であった。MDRVV003に対する感受性のIC50を算出すると、A549でMOI 0.4, EBC1でMOI 5.0, 3LLでMOI 3.3であった。 MET阻害薬tepotinibに対する反応も検討した。IC50は、A549で4789nM, EBC1 388nM, 3LLで4306nMであった。 各細胞株の蛋白発現をウエスタンブロットで評価した。全ての細胞株において、ERK発現を認めた。活性化ERKの一指標であるphospho-ERKは、H23, EBC1, RERF-LC-A1, LLC1で比較的高発現であった。 B6マウスに3LLを接種し、腫瘤が形成された時点でMDRVV003およびtepotinibを投与した。MDRVV003接種群では非接種群と比較して腫瘍増大が抑制された。またtepotinib投与によっても腫瘍増大は抑制された。
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