研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因は喫煙であり、アポトーシスによる細胞死はCOPD発症に中心的な役割を演じている。高ホモシステイン血症は呼吸機能の低値と関連し、喫煙者において高ホモシステイン血症は呼吸機能の経年低下と関連する。さらに高ホモシステイン血症は生体において、小胞体ストレスを誘導すると考えられている。以上から、高ホモシステイン血症における喫煙曝露は、肺胞上皮細胞のアポトーシスを増加してCOPDを進展させる可能性が考えられた。しかしこれまでに、これらの仮説は実証されていない。本研究では、培養細胞実験と動物実験を行い、本仮説の実証を試みた。細胞実験:A549細胞(ヒト肺胞上皮細胞株)をホモシステインとともに培養し、タバコの煙抽出物(CSE)に曝露して、細胞の生存率とERストレスに関連するタンパク質の発現を観察した。Hcy濃度が増加するにつれてアポトーシス細胞が増加し、さらにCSEによって増強した。 ERストレスマーカーのタンパク質発現レベルは、同時刺激後に有意に増加した。ビタミンB12と葉酸の補給にてホモシステインを減少させるとERストレスマーカーの改善が観察された。動物実験:C57BL6マウスにメチオニン含有水を与えることで、高ホモシステイン血症が惹起された。メチオニン含有水もしくは通常水(対象群)をマウスに与えながら、タバコ煙を6か月曝露した。肺組織における気腫性病変は、対照群と比較して、メチオニン投与群でより重度であった。さらにメチオニン投与群にてERストレスを介する肺胞細胞アポトーシスの増強が観察された。以上から喫煙による肺気腫形成には、高ホモシステイン血症を介するERストレス増強が関連していることが示された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
The International Journal of Biochemistry & Cell Biology
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Scientific Reports
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