研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は末梢気道病変と気腫性病変が複合的に作用し、正常に復することのない気流閉塞を示す。今日のCOPD治療において、気腫性病変などの組織破壊・リモデリングの予防治療や再生治療は確立されていない。我々は、タバコ煙曝露COPDモデルマウスを用いた運動の気腫化抑制実験において、マイオカインであるIrisin(アイリシン)を介してnuclear factor erythroid 2-related factor2 (Nrf2)の発現増強による気腫化抑制効果を見出している。また、我々の健常喫煙者コホートにおいて気腫化進行にNrf2遺伝子多型が関与する結果を得ており、Nrf2の発現増強・活性化がCOPDの気腫化抑制・再生の治療戦略となる可能性がある。バルドキソロンは、Nrf2を結合因子であるkeap1より解離させて、Nrf2活性化を促す。バルドキソロンメチルは、糖尿病性腎症患者を対象とした第2相臨床試験においてGFR(糸球体濾過量)の有意な改善と忍容性を示し、実臨床への導入が検討されている。本研究課題の2年目に当たる2020年度は、2019年度に実施したバルドキソロンのkeap1への作用をタバコ煙曝露COPDモデルマウスでの気腫化抑制のターゲットとなる気道上皮を用いたin vitro実験の結果を踏まえてタバコ煙曝露COPDモデルマウスでのNrf2発現増強・活性化剤の気腫化抑制効果の評価を行う予定であったあったが、COVID-19流行に伴う本学動物実験施設の一時閉鎖や再開後も新規の動物搬入の禁止などにより、in vivo実験は行えず、in vitro実験の追加を行った。
4: 遅れている
本研究課題の2年目に当たる2020年度は、タバコ煙曝露COPDモデルマウスでのNrf2発現増強・活性化剤の気腫化抑制効果の評価をin vivoで行う予定であったあったが、COVID-19流行に伴う本学動物実験施設の一時閉鎖や再開後も新規の動物搬入の禁止などにより、in vivo実験は行えず、in vitro実験の追加を行った。
引き続き本学動物実験施設の動物実験制限があるが、緩和されつつあるため2020年度に予定していたin vivo実験に取り組む予定である
COVID-19流行に伴う本学動物実験施設使用制限のため、動物実験は行わずにin vitro実験を中心に研究を進めた。学会旅費を計上していたが、前述の理由による発表成果の不足や国内外への移動自粛により旅費としては使用せず、in vitro実験に用いた。5242円の残余金は2021年度分助成金と合わせて研究に有効に使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
巻: 15 ページ: 3063~3077
10.2147/COPD.S280401
臨床栄養
巻: 136 ページ: 990-996