研究課題/領域番号 |
19K08662
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
南方 良章 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80295815)
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研究分担者 |
中西 正典 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10347601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身体活動性 / COPD / 歩数 / モチベーション / 3軸加速度計 / sedentary行動 |
研究実績の概要 |
sedentary行動 (1.0~1.5 METsの活動)の詳細分析の目的で、16例の安定期COPD患者に対し、強度別活動時間評価用加速度計(Active Style Pro HJA-750C)と種類別活動時間評価用加速度計(DynaPort Move Monitor)を同時に装着し、sedentary 時間における活動種類を検討した。sedentary時間は404分(全計測時間の54.0%)で、臥位時間と座位時間はそれぞれ212分(28.3%)、370分(49.4%)であった。sedentary時間は臥位あるいは座位時間単独とは相関関係はみられず、臥位+座位時間と有意な相関関係を示した。逆に、sedentary 時間は、全臥位時間中62.7%、全座位時間中63.3%と、臥位、座位ともに約63%の時間でsedentary 行動が行なわれており、臥位時間:座位時間は1:1.7であった。既報では、健常高齢者で1:10.5、COPDで1:4.3とされていたが、実際には臥位時間がより長いことが判明した。この結果は、Health Educ Public Health誌に掲載された。 作成した歩数予測式と目標値設定方法から患者個々の歩数目標値算出し、16 例のCOPD患者に対して、ベースライン、歩数計提供後(8週後)、歩数計と目標値提供後(16週後)で歩数を計測し、目標値提供時の目標値に到達した患者割合(到達率)を比較した。その結果、到達率は8週で31.1%に対し16週で68.8% (p=0.034)と到達率の有意な上昇効果が確認できた。なお、実際の歩数に関しては、全例では増加傾向はみられたが有意差は得られなかった (p=0.06)。しかし、ベースラインで低歩数の患者群では、歩数の有意な増加が確認できた(p=0.008)。この結果は、Adv Respir Med誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に引き続き令和3年度も、新型コロナウイルス蔓延の影響により患者自身の活動制限がおこなわれ、経時的変化を評価する研究に関しては不適格な症例が増加し、患者集積に難渋した。そこで、横断的に評価できる検討を中心に検討した。 今年度は主にCOPD患者におけるsedentary行動について詳細分析ができた。これまで、健常者や他疾患患者に対し、sedentary時間の短縮には座位時間の短縮が中心的に推し進められてきたが、COPD患者では臥位時間の占める割合が予想以上に大きく、sedentary時間の短縮には、座位時間と同時に臥位時間の短縮も目指す必要があることが判明した。今回の結果は、今後のCOPD患者の管理上、座位のみではなく臥位の時間にも注目する必要があることを示唆しており、極めて重要な結果が得られたと考える。 目標値提供の効果に関するパイロット試験では、新型コロナウイルス感染症の蔓延で脱落例が多く、16例のデータのみの解析となった。その影響もあり、歩数の増加傾向はみられたものの有意差が得られるまでには至らなかった。しかし、目標値提供により到達率の有意な上昇が確認され、目標値提供の有用性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の収束の目途が立たない状況下では、介入試験の実施は困難さを伴うことが明らかとなった。そこで、今後は、基本的に横断的検討を行なうこととする。多項目からなる関連因子の分析から、sedentary時間に関連する因子を抽出し、身体活動性、特に3.0 METs以上の活動時間と関連する因子との差を検討し、sedentary時間と身体活動性の関与因子の差を検討する。さらに、得られた関連因子から、どのような介入が身体活動性やsedentary時間を改善しうるかについて分析する。また、加速度計から得られたデータから、sedentary時間のデータを自動抽出できるプログラムの作成も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイブリッド開催等で学会の旅費が不要になったため。
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