研究課題/領域番号 |
19K08668
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
細川 好孝 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60229193)
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研究分担者 |
太田 明伸 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30438048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 癌抑制遺伝子 / 遺伝子編集技術 / cDNAマイクロアレイ |
研究実績の概要 |
・悪性中皮腫は、主にアスベスト曝露に関連して発症し、2000年から2039年までの40年間で患者の死亡者数は10万人を超えると予測されている。多くは進行した状態で診断され、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が施されるが、その効果は極めて限定的である。悪性中皮腫では、癌抑制遺伝子p16INK4a ,NF2 , BAP1に不活化変異が高頻度に検出される。本研究では、遺伝子編集議出を用いて、胸膜中皮細胞において癌抑制遺伝子ノックアウト株を作成し、中皮腫の増殖・浸潤・転移に関わる細胞内分子および阻害化合物を同定し、新規診断マーカーや新規治療薬の候補分子を探索することを目的とする。将来的には中皮腫に対する効果的な診断法・治療薬を開発することを目指す。 ・我々は、網羅的発現解析とリアルタイムPCR解析によって、癌抑制遺伝子NF2ノックアウト株で高発現する遺伝子としてFGF受容体2を同定した。FGF受容体2抗体を用いた組織アレイ解析では、中皮腫23検体中で9検体が陽性を示した。FGF受容体2が中皮腫バイオマーカーの有望な候補であることが示された。 ・次に、NF2/p16 ダブルノックアウト細胞株を樹立し、CD24遺伝子が特異的に高発現していることを見出した。CD24抗体を用いた組織アレイ解析では、中皮腫45検体中で34検体が陽性を示した。FGF受容体2と共に、CD24が新たな診断バイオマーカーの候補であることが示された。 ・さらに、ダブルノックアウト細胞株を用いて、400個小分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、脂肪酸合成酵素阻害剤が特異的な細胞増殖抑制効果を示すことを発見した。 ・癌抑制遺伝子BAP1のノックアウト細胞株の樹立に成功した。本ノックアウト細胞株を用いて、400個小分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、カルモジュリン・キナーゼ阻害剤が特異的な細胞増殖抑制効果を示すことを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胸膜中皮細胞でNF2ノックアウト細胞株、NF2/p16 ダブルノックアウト細胞株およびBAP1のノックアウト細胞株を樹立し、網羅的発現解析と免疫組織染色解析から胸膜悪性中皮種検体で高発現している分子を複数同定することができ、当初の実験計画をおおむね達成できている。さらに、400個小分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、複数の治療薬候補分子を同定しているから。
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今後の研究の推進方策 |
・愛知県がんセンター、近畿医科大学、兵庫医科大学の研究チームと連携し、FGF受容体2 抗体およびCD24抗体を用いた中皮腫患者検体免疫組織染色を拡大して実施する。中皮腫特異的な染色が確認できれば、次に患者血清や胸水を用いたELISA法及びCLEIA 法を確立し、新たな早期診断の開発を目指す ・400個の小分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、NF2/p16 ダブルノックアウト細胞株、BAP1ノックアウト細胞株で腫瘍特異的な細胞増殖抑制効果を示す脂肪酸合成酵素阻害剤、カルモジュリン・キナーゼ阻害剤を同定した。ある腫のがん細胞では脂肪酸合成が亢進しており、脂肪酸合成の亢進ががん細胞の増殖に関与していることが明らかになっている。今回発見した脂肪酸合成酵素阻害剤による細胞増殖抑制効果の分子基盤を明らかにしていく。 ・NF2/p16 ダブルノックアウト細胞株、BAP1ノックアウト細胞株を準備し、東京大学の創薬機構に所蔵される小分子化合物ライブリーの取得を申請し、約1~2万種類の化合物からシーズ探索を計画する。 ・中皮腫の病態を細胞レベルから個体レベルで解析するため、樹立した細胞株を種々の免疫不全マウスに移植し、マウス造腫瘍能について検討する。癌抑制遺伝子ノックアウト株の移植に成功すれば、細胞レベルで確認された生物学的特性を個体レベルで検証することが可能となる。また、細胞レベルでスクリーニングされた化合物の効果を個体レベルで検証することも可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
癌抑制遺伝子ノックアウト細胞株の樹立および小分子化合物ライブラリーのスクリーニングが当初の計画より早期に効率よく達成されたため、分子生物学実験にかかる物品費が低く抑えることができた。実験助手を採用する必要がなく、人件費も抑えることができたため。次年度の使用額はマウスを用いた移植実験に使用する計画である。
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