研究課題
慢性腎臓病(CKD)患者の高齢化に伴い、認知機能障害と筋消耗の合併症は重要な問題であるが、その発症機序や予防・治療法は確立されていない。CKD時に体内に蓄積する尿毒素は認知機能障害や筋消耗にも関与すると考えられているが、脳や筋への毒性については不明な部分が多い。本研究では、尿毒素を除去するAST-120が与える腸内細菌叢の影響と、様々な尿毒素を用いた筋芽細胞C2C12や海馬細胞HT-22へ与える毒性について評価を行なった。AST-120を腎不全マウスに投与することで、尿毒素産生に関わる腸内細菌叢に変化が認められた。細胞実験では、尿毒素として、インドキシル硫酸、p-クレシル硫酸、メチルグリオキサールなど代表的なものを使用し、MTTアッセイにて細胞増殖能を評価した。またリアルタイムPCRで炎症、線維化マーカーの評価を行った。その結果、インドキシル硫酸、インドールなどの尿毒素が毒性を示すことが明らかとなった。さらにインドキシル硫酸は、HT-22細胞に対して細胞増殖能を抑制し、炎症、酸化ストレスを誘導することが分かった。またC2C12細胞では、インドキシル硫酸とメチルグリオキサールが毒性を示すことが分かった。さらに本研究では、腎不全マウスとして、アデニン誘発腎不全マウスを用い、治療薬候補Xを投与し、腎機能や筋萎縮の改善効果も評価した。その結果、治療薬候補Xは腎機能低下を抑制し、その結果、筋萎縮も抑制されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
予定通り研究を進めることができている。
尿毒素の認知機能に与える影響について、動物実験(Y字型迷路等)で評価を行う。さらに。治療薬候補Xの分子作用機序について、尿細管細胞由来細胞HK-2細胞を対象とし、研究を進める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 525 ページ: 773-779
10.1016/j.bbrc.2020.02.141.