研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者の高齢化に伴い、認知機能障害は筋消耗(サルコペニア)などの合併症が重要な問題となっているが、その発症機序、予防・治療法については多くの課題が残されている。昨年度までにわれわれは、尿毒素が海馬神経細胞株HT-22に与える影響について調べた結果、一部の尿毒素がHT-22の生存率を低下させることを明らかにした。そこで、今年度は発症機序の異なる2種類のCKDモデルマウスを作製し、行動解析:Y字迷路試験・新奇物質探索試験を行い、認知機能の評価を来なった。現在、その結果を解析中である。 さらに、われわれは尿毒素のインドキシル硫酸が筋細胞において細胞内代謝失調を誘導し、サルコペニアの発症・進展に関わることを明らかにており、今年度は別の尿毒素であるメチルグリオキサールの筋細胞に与える影響について、マウス筋芽細胞株C2C12を用いて調べた。その結果、メチルグリオキサールは筋芽細胞にのみ悪影響を及ぼし、筋管細胞には作用しないことを明らかにした。メチルグリオキサールの作用として、筋芽細胞の筋萎縮関連遺伝子(Murf1, Atrogin-1)、炎症性サイトカイン(Il6)の発現を上昇させた。さらにNF-kBのタンパク質レベルでの発現が、メチルグリオキサール刺激1時間で上昇しており、メチルグリオキサールはNF-kBを介した筋萎縮経路を活性化させることが明らかになった。さらに筋芽細胞内においては、代謝経路が脂肪酸合成経路へ変化しており、その結果ATP産生量が低下することを明らかにした。
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