慢性腎臓病は進行性に腎機能が悪化し、代替療法として臓器移植か血液透析を導入する必要がある。日本では主に血液透析が腎臓の代替療法として行われているが、透析患者の平均寿命は非透析患者と比較して短縮されてしまうことがわかっている。透析患者の生命予後を規定する疾患は心血管疾患がその多くを占めており、さらに心血管疾患のリスク因子として腎機能低下に伴うリン代謝異常が関与することが明らかにされている。しかしながら腎臓におけるリン代謝調節機構はいまだに不明な点もあり、重要な研究課題となっている。 本研究では腎臓の近位尿細管でリン輸送を担うトランスポーターの制御機構に新たなメカニズムがありうることを報告したものであり、重要な発見であると考えられる。腎臓の近位尿細管上皮細胞は糸球体をろ過した様々な分子が代謝を受ける重要な部位であり、数多くの物質の取り込みや代謝に関与する機能分子としてエンドサイトーシス受容体であるメガリンが関与している。一方、リンの輸送にはナトリウム依存性のリントランスポーターであるNapi2aが主に関与する。メガリンは多くのリガンドの再吸収だけでなく、近くに局在するチャネルやトランスポーターの制御とも相互作用する可能性がこれまでにも報告されていた。本研究では、近位尿細管のNapi2aへの作用機序が定かでない、リン利尿因子である線維芽細胞増殖因子23(FGF23)や老化関連因子であるαーKlothoがメガリンを介して働く可能性を示唆したものであり、近位尿細管におけるリン輸送に関する新しい発見である。
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