研究課題/領域番号 |
19K08685
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長田 太助 自治医科大学, 医学部, 教授 (40393194)
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研究分担者 |
前嶋 明人 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70431707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腎間質線維化 / Nrf2-KEAP1 / 血管内皮細胞 / Bardoxolone methyl |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病が進行し,末期腎不全に至る過程で尿細管間質の線維化が重要である.傷害された尿細管細胞が放出するTGFβなどにより,線維化が増悪する.Bardoxolone methyl (CDDO-Me)が推定糸球体濾過率 (eGFR)を上昇させたとの臨床における報告があるが,CDDO-MeがNrf2-KEAP1系の活性化を介して種々の抗酸化的酵素の転写を上昇させることが知られているものの,その機序は解明されていない.本研究においては,以下の2つを目標に研究を進めている.1)in vitroの培養系において血管内皮のNrf2活性化が,anti-fibrotic factorの産生を増加させるのか確かめる,2)血管内皮特異的Nrf2 knock out マウスを作成し,腎虚血再灌流障害モデル(IRI),片側尿管結紮モデル(UUO)による間質線維化が対照マウスよりも増強するか検討する.1)に関しては,CDDO-Me刺激は培養血管内皮細胞で何らかのanti-fibrotic factor を産生していることは確かめられたが,それがNrf2活性化を介するのかどうか,その実体は何なのかについてはまだ確認できていない.若干予定が遅れている理由については,このあとの欄で記載した.2)で使用するNrf2 floxマウスはBINDSのご支援の下作成中であったところで,今回の課題を申請したが,本学の実験施設にそのNrf2 floxマウスの精子が納入されたのが2019年11月であった.その後すぐ,人工受精で児を得た後,既存のTie2-Creマウスと交配して目的のマウス(Tie2-Cre/Nrf2 flox)を現在作成中である.できあがり次第,最初にUUOモデルで間質線維化が増強するが,CDDO-Meで改善しないか検討し,in vivoでもNrf2の活性化は抗線維化作用に重要であることを示す予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)の血管内皮のNrf2活性化が,anti-fibrotic factorの産生を増加させるin vitroのモデルについて,予想していたよりも時間が掛かっている理由は以下の通りである.siRNAを用いて培養内皮細胞のNrf2をknock downする予定で準備をしていた.しかし,既報のsiRNA,および大手メーカーの既製siRNAを複数試したものの,十分なNrf2のknock downができなかった.リポフェクション法を使ったトランスフェクションでsiRNAを内皮細胞に入れようとしていたので,トランスフェクションの効率が悪い可能性もあると考えて,各種リポフェクション試薬を試したものの十分な解決にならなかった.Nrf2の特異性を示すことが不可能な状況に陥ってしまい,このレベルで止まってしまったため,anti-fibrotic factorの本体をマイクロアレイ解析で示すことは当然できなくなってしまった.この後の欄で詳細は記載したが,Tie2-Cre/Nrf2 floxマウスの腎臓から血管内皮を単離・培養して,この問題を解決することにした.この系を用いて,CDDO-MeがNrf2を介してanti-fibrotic factorの産生を増やすかを確かめ,knock downで特異的に減少した因子をマイロアレイ解析で同定を目指す.また2)のNrf2 floxマウスに関しては,上述の通り,納入が予定よりも半年遅れた影響が大きい.現在Nrf2 floxマウスは順調に増え,Tie2-Creマウスと交配が始まり,ようやく児が得られたところである.現在Genotypingしようとしているところまで到達した.Nrf2-floxについては今後,homoにしなければならず,あと一段階目的のマウスを得るのに手間がかかり,さらにそれを実験できるレベルの匹数をそろえるのに時間がかかると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
1)は,Tie2-Cre/Nrf2 floxマウスの腎臓から血管内皮を単離・培養して用い,対照としてはwild typeとNrf2 floxマウスの腎臓からそれぞれ血管内皮を単離・培養したものを用いる.CDDO-Meと対照としてDMSO(溶媒)でover-night刺激したそれぞれの培養細胞の上清を遠心した後,上澄みをCut-Off limit 3.5 kDaの透析カセットで透析してCDDO-Meを除き,さらに遠心式限外濾過フィルタで容量を減じた後,それをNIH-3T3細胞の培養液に混じ,TGFβ 2.5ng/mLで20hr刺激する.それぞれのNIH-3T3細胞をreal time PCRに供することにより,collagen Iα1の転写程度を比較し,CDDO-Meで誘導されたanti-fibrotic factorの発現増加がNrf2依存的かを示す.それを確かめた後,wild type, Nrf2 flox, Tie2-Cre/Nrf2 flox,3種類の培養血管内皮細胞でCDDO-Me刺激後に発現増加する遺伝子のうち,Nrf2依存的なものをマイクロアレイ解析で絞り込むことが可能になる.2)に関しては,Tie2-Cre/Nrf2 floxマウスが十分の匹数を確保でき次第,UUOモデルを作成する予定である.対照マウス(Wild type, Nrf2 flox)と比べてTie2-Cre/Nrf2 floxマウスでは間質線維化が増強するものの,CDDO-Me投与によって改善しないことを確かめる.これによってin vivoでも血管内皮でのNrf2活性化は抗線維化作用に重要であることを示す予定である.当初は虚血再還流(IR)モデルも並行して作成する予定であったが,予定が遅れているのでUUOモデルを優先的に実施することにした.UUOモデルの結果の確認後,IRモデルについては実施する.
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