研究実績の概要 |
末期腎不全の病態では尿細管間質線維化が重要である。BEAM studyによりBardoxolone methyl (CDDO-Me)が推定糸球体濾過率を上昇させたと報告されたが、CDDO-MeがNrf2-KEAP1活性化を介して種々の抗酸化的酵素の転写を上昇させることが知られているものの、その腎機能改善機序は未解明である。本研究では血管内皮細胞におけるNrf2活性化がどのように線維化の機序に関与するのかを検討した。血管内皮特異的なNrf2 knock out マウス(Tie2-Cre/flox-Nrf2)を作出し、これに片側尿管結紮モデル(UUO)を作成することによって間質線維化が増強するか検討し、Nrf2の血管内皮特異的な抗線維化作用を明らかにする。創薬等先端技術支援基盤プラットフォームの支援でNfe2l2 (Nrf2)遺伝子のExon5を挟み込むようにflox配列を挿入した遺伝子改変マウスを作出し、既に飼育していたTie2-Creマウスと交配し目的のTie2-Cre/flox-Nrf2を作成した。血管内皮のNrf2欠損によって予想した結果が得られない可能性も考慮し、Pax8-Creマウスとの交配で尿細管特異的Nrf2 knock out マウス(Pax8-Cre/flox-Nrf2)も作出し、解析に供した。2週間のUUOではCDDO-Me投与で対照と比べ線維化部分が軽減していた。今回の2種類のCKOマウスに2週間のUUOモデルを施行したところ、予想とは異なり、Tie2-Cre/flox-Nrf2と対照の間ではUUOによる間質線維化の程度は変化せず、Pax8-Cre/flox-Nrf2で間質線維化が増強していた。Pax8-Cre/flox-Nrf2のUUOモデルではreal-time PCRで評価したTGF-β, collagenⅠ, aSMAの発現が上昇傾向だった。
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