前年度に、胸腺ライブラリーを対象とした酵母ツーハイブリッド法によりCCケモカイン(X)が、Crb2の結合分子である可能性を得た。そこで、Crb2発現HEK細胞株にCCケモカイン(X)を導入し免疫沈降を行ったところ、両分子の結合性が証明された。2重免疫染色により、Crb2細胞株の細胞膜上にCCケモカイン(X)が同局在することが観察された。この両分子の結合は、シアル酸を介することが判明した。Crb2発現HEK細胞とCrb2発現マウスポドサイト細胞株にリコンビナントCCケモカイン(X)を反応させ、ezrinおよびアクチンの変化について、それぞれの宿主細胞と比較した。その結果、Crb2存在下において、CCケモカイン(X)によるezrinのリン酸化亢進とcortical actinの形成促進が明らかになった。マウスにnativeなリコンビナントCCケモカイン(X)を大量に投与する目的で、大腸菌による発現系の樹立を試みたが、aggregate formのみが得られたため、使用に至らなかった。そこで、市販のリコンビナントCCケモカイン(X)をC3H/HeNマウスに静注あるいは腹腔内投与を行った。これも蛋白尿は惹起できなかったが、使用濃度と期間の検定が必要と考えられた。しかし、C3H/HeNマウスから糸球体を単離し、このリコンビナントCCケモカイン(X)を反応させた後、電顕化で観察したところ、著明なポドサイト足突起の癒合が観察された。以上のことから、リンパ系組織内の生理的液性因子であるCCケモカイン(X)は、確かに糸球体のCrb2に結合し、ポドサイト障害を惹起させることが明らかになった。
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