常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は腎臓嚢胞形成が特徴で、最終的に透析を伴う末期腎不全になる場合が多い。申請者らは、ADPKDやそのモデルマウスにおいて、嚢胞形成部位にアミノ酸トランスポーターの1つである、LAT1が高発現することを見出した。また、このADPKDモデルマウスにLAT1の基質となる分岐アミノ酸(BCAA)を投与すると、腎臓の嚢胞形成が悪化することを明らかにした。したがって、LAT1の発現・機能上昇が腎嚢胞形成促進に関与することが考えられる。ADPKDモデルマウスとLAT1とのダブルノックアウトマウスをかけあわせ、腎嚢胞の形成を観察した。その結果、予想に反して嚢胞形成状態の改善は見られず、逆に悪化している個体も存在した。 また、ADPKDの患者やADPKDモデルマウスでは、腎嚢胞だけでなく肝嚢胞の形成が併発する場合が多い。BCAA投与によって肝嚢胞も悪化することから、肝嚢胞においても腎嚢胞と同様にLAT1の発現が考えられたが、その発現は検出できなかった。そこで、肝嚢胞の形成に関わるアミノ酸トランスポーターに関して、検討を行った。その結果、候補となるアミノ酸トランスポーターが絞られたことから、この分子について更に検討を進めていく予定である。
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