研究実績の概要 |
本研究では腎老化および腎老化をベースとして発症するCKDの病態における、ポドサイトのDSBおよびエピゲノム変化の役割を、ポドサイト特異的DSB誘導マウスおよび腎生検検体を用いた検討により明らかにすることを目的とした。 本年度は、ポドサイト特異的IpPoI発現マウスを作成し、その表現型の検討を行った。その結果、本マウスは6週齢前後から有意なアルブミン尿の増加を呈し、電子顕微鏡写真では、ポドサイト足突起の広範な癒合が認められた。IpPoIは特定のDNA配列を切断するホーミングヌクレアーゼの1種であり、今後切断部位と周辺のDNAメチル化変化を始めとしたエピゲノム変化の関連、更にDNA損傷修復を繰り返すことによるゲノム全体に対する変化とそれに伴う表現型の変化について、検討予定である。 また、臨床研究に関しては、尿中脱落細胞におけるDNA損傷とエピゲノム修飾因子との関連を高血圧、糖尿病患者において検討し、これらのファクターが非侵襲的なマーカーとなる可能性が示唆された(Hishikawa, Hayashi, et al. Sci Rep, 2020)。また、腎生検検体を用いてIgA腎症におけるeGFR低下と糸球体DNA損傷やDNAメチル化との関連、ポドサイトDNA損傷とpodocytopathyとの関連についても検討し報告した(Hayashi, et al. Sci Rep, 2020)。引き続き、他の糸球体疾患における関連、老化との関連についても検討予定である。 以上のようにマウスモデルの解析及び臨床研究により、DNA損傷修復とエピゲノム変化、および老化やCKD病態との関連について、今後の更なる検討により明らかにしていきたいと考えている。
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